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2022年1月19日(水)

きょうの潮流

 最初は好きな野球を描きませんでした。自分がイメージする投げる、打つ、走るがまだ描けない―。漫画家の道を歩み始めてから10年後、この絵なら勝負できると世に送りだしたのが「男どアホウ甲子園」でした▼それからは野球漫画ひとすじに。「ドカベン」「野球狂の詩」「あぶさん」…。作品の名を聞けば、すぐに魅力あふれる登場人物たちが目に浮かんできます。人生を野球への愛にささげた漫画家の水島新司さんが82歳で亡くなりました▼「プロ野球選手を唸(うな)らせるほど専門的な目線で野球の『可能性』と『面白さ』を探り続けてきたと思う」。スポーツを題材にした漫画家として、草野球の仲間として、同世代のちばてつやさんが追悼のコメントを寄せています▼彼の手にかかると、チーム一人ひとりの個性、監督や控え選手まで綿密に描かれていたと。子どもたちや実在の選手にも影響を与え、「ドカベン」の主人公、山田太郎を手本にしたというプロ野球選手も▼当時はやりだったスポ根ものとは一線を画す朗らかな作風。完全無欠のヒーローではなく、それぞれが弱点をもちながら活躍する姿。女性のプロ野球選手を誕生させた先見性。作品には人間への深い愛情と大きな可能性が流れていました▼野球選手になりたかった夢を漫画でかなえた水島さん。持ち味ゆたかな選手たちに囲まれ、長年楽しく筆を走らせてきたといいます。集団のなかで個性を輝かせ、もっと自由に生き生きと。それが野球なんだというメッセージを込めて。


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