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2022年1月14日(金)

きょうの潮流

 四つの目標がありました。日本では上映されない第三世界の名作、大手興行がとりあげない名作、カットされた名作の完全版の紹介。日本映画の名作を世に出す手伝いです▼世界の埋もれた名画をひろめる「エキプ・ド・シネマ(映画の仲間)」。その運動を日本で始めた故・高野悦子さんは、岩波ホールの総支配人でした。以来半世紀余り、65カ国・地域の271作品を上映してきました▼知らない世界や異文化との出合い、人間の尊さや生きる意味を見つめる空間でした。ここで上映されてきた作品が、どれだけの心をゆさぶり、ゆたかにしたか。そのミニシアターの先駆けが今年の7月末で幕を閉じることになりました▼「新型コロナの影響による急激な経営環境の変化を受け、劇場の運営が困難と判断いたしました」。同ホールが発表した閉館の理由です。コロナ禍の苦境は各地のミニシアターも同じで、有志による支援だけでは追いつかないのが現状です▼文化にたいする国の施策の貧しさも改めてうきぼりになりました。多様な文化や異なる価値観にふれる機会を与えてくれる貴重な発信地が、個人や民間任せという現実が突きつけられています▼「このホールを学問、文化、芸術の、かわいく小さいが、どこにもないような独特の花園に育てあげてもらいたい」。54年前のホール開き、野上弥生子さんの講演に感銘をうけ、この空間に創造の虹がかかったと話していた高野さん。ともし続けた色とりどりの灯(あか)りは決して消えないでしょう。


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