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2022年1月11日(火)

主張

2022年の世界経済

格差ただす本格的取り組みを

 新型コロナウイルスのオミクロン株の拡大によって世界で新たな感染の波が起きています。米国、英国などで年明け早々、新規感染者が過去最高に達したことで、回復しつつあった経済にかげりが見えています。途上国経済は打撃から抜け出せずにいます。コロナ感染症の世界的流行(パンデミック)は先進国と発展途上国との格差を浮き彫りにしました。格差をただす本格的な取り組みを国際社会が強める必要があります。

気候危機の打開も急務

 「経済の回復もワクチンも不平等だ」。世界銀行は2021年の総括で、コロナの影響が貧困国により重くのしかかっていることを改めて指摘しました。1日1・9ドル(約220円)未満で暮らす極貧層は20年だけで1億人以上増加しました。

 途上国ではコロナによる休校が長期化しています。学習不足のため基本的な学校教科書を理解できない10歳の子の割合は低・中所得国で70%にのぼると世銀は推計しています。基礎学力を身につける機会を失って、貧困が次の世代に及ぶおそれがあります。

 途上国がいま直面している最大の問題がワクチン接種の遅れです。接種を完了した人の割合は米欧・日本など高所得国で60%を超える一方、低所得国ではわずか5%です。これでは経済・社会活動の再開は困難です。世界全体で感染を封じ込めない限り、コロナの終息はありえません。先進国と国際機関が途上国へのワクチン供給を急がなければなりません。

 格差を是正するうえで気候危機を打開する取り組みも重要です。世界の気温上昇を抑える抜本的な対策をとらなければ、干ばつ、海面上昇など自然環境の変化によって30年までに新たに1億3200万人が極貧層に落ち込み、50年までに2億1600万人が移住を強いられると世銀は警告しました。

 影響を受けるのは途上国だけではありません。各国の中央銀行で構成する国際決済銀行(BIS)は、気候変動が世界の金融システムを揺るがしかねないとする報告書を20年に発表しています。大規模災害による損失や食料不足、労働力の減少を通じて経済成長や金融の安定を損なうおそれがあると言います。

 今年11月にはエジプトで国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開かれます。昨年COP26で合意した「世界の気温上昇を産業革命前と比べて1・5度に抑える」目標を達成するために各国が温室効果ガスの排出削減目標を引き上げ、行動に踏み出すことは世界経済を回復させるうえでも待ったなしです。

国際課税の実行へ正念場

 こうした世界的課題に各国が取り組むために、税制の抜け穴を利用して課税を逃れている多国籍大企業や、優遇税制の恩恵を受けている大富豪に応分の負担を求めることが欠かせません。

 昨年、136カ国・地域が多国籍企業への国際課税に合意したことは画期的な前進です。23年の実施に向けて今年末までに国際条約を締結することになっています。合意の実行に向けて今年が正念場です。

 パンデミックに陥った世界のよりよい再建を果たすために各国政府と国民の運動が力を尽くすことが求められます。


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