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2021年12月2日(木)

リニア線上に「要注意」砂層 住民がボーリング調査

専門家「地上に影響出る恐れ」

東京・田園調布

 JR東海が約7兆円もの巨費を投じ、国の認可を受けて建設を進めるリニア中央新幹線。東京都大田区田園調布の山田武弘さん(仮名)は、自宅の直下にリニアのトンネルが掘られることを知り、地質を確かめるために自費でボーリング調査をしました。その結果、リニアのルート上に水を含んだ砂層があると判明。専門家は「工事を行う上で要注意だ」と指摘します。(丹田智之)


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 リニア中央新幹線は、東京・品川から名古屋まで285・6キロの区間の約86%がトンネルです。東京と神奈川、愛知の都市部では、住宅街の地下を直径14メートルのシールドマシン(掘削機)で掘り進めようとしています。

 JR東海が説明会で配布した資料によると、山田さんの自宅の直下にも、83~97メートルほどの深さにトンネルが掘られる計画です。ただ、地表から40メートル以深の大深度地下を開発するための法律により、地権者の同意や事前の補償は不要とされています。

 東京外環道の大深度地下トンネル工事では、東京都調布市の住宅街で陥没や地盤沈下が相次ぎました。工事により地盤に緩みが生じたとみられています。

 こうした状況に「工事の影響が出てからでは遅い」と考えた山田さん。ルート上の地質を確認しようと専門業者に依頼し、9月下旬から10月上旬にかけて自宅の裏庭でボーリング調査をしました。

 調査結果を記した地質柱状図には、リニアのトンネルが掘られる地下85~90メートルに「シルト混じり細砂」の層があると書かれています。シルトは、砂と粘土の中間の細かさをもつ土です。

 この砂層には、地下水が含まれていることを示す「含水中位」との記載もあります。採取した砂が入ったカプセルの内側は白く曇り、大量の水滴が付着していました。

 住民らに対してJR東海は、外環道の陥没箇所のように表層の近くから深いところまで粒子の粗い砂層がある「特殊な地盤条件」ではないと強調。陥没が起きないかのように説明しています。

 一方、山田さんのボーリング資料を見た都内の地質に詳しい研究者は「固まった泥層の間にいくつも砂層がある。この砂層は圧力がかかった地下水を含む帯水層だ」といいます。

 この研究者は「リニアのトンネルを掘ろうとしているシルト混じり砂層は、土の粒子が非常に均一で固まっていない。圧力がかかった地下水を含むこうした砂層を掘れば、砂の流動化が予想される」として、次のように指摘します。

 「シールドマシンが砂を取り込みすぎたときに空洞や地盤の緩みが生じ、やがて地上に影響が出るおそれがある。凝固剤などで埋め戻す作業も容易ではなく、工事を行う上で要注意だ。泥層があることで騒音や振動も伝わりやすい」

 山田さんは、大田区と世田谷区の住民24人がリニアの工事差し止めを求めた訴訟の原告です。第1回口頭弁論(10月26日、東京地裁)で意見陳述を行い、今回のボーリング調査の結果を示しました。

 JR東海は「調査掘進」と称し、すでにリニアの起点となる品川駅付近からシールドマシンによる掘削に着手しています。

 山田さんは「ここで普通に暮らしているだけなのに、陥没や地盤沈下のリスクを抱えてしまった。周辺一帯の生活環境が壊される危機が現実的に迫っている」とし、工事の中止を求めています。


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