しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年12月2日(木)

きょうの潮流

 たとえば遠征の際。監督の行動パターンをよんで、座る席や荷物の置き場所を確保する。みんなで食堂に入った時、私の日頃の言動に注意を払っている連中はパッと私の周りに座り、同じ物を注文する▼そんな気づかいやとっさに対処できる人間を育てたい―。彼はそれを「田中式スペシャル教育」と呼んでいました。日大相撲部の監督だった頃の人材育成術を田中英寿氏が昔の著書で得意げに語っています(『土俵は円 人生は縁』)▼アマ相撲界で選手としても指導者としても実績を残し、相撲を縁に人脈をひろげていきました。大学の経営にもかかわりはじめ、2008年に理事長に座ってからは絶大な力で“日大のドン”と呼ばれる存在に▼暴力団とのつながりなどさまざまな疑惑にまみれてきましたが、とうとう背任事件に絡む脱税容疑で逮捕されました。裏金づくりに暗躍していた元理事は理事長の覚えめでたい人物だったといいます▼周りに子飼いをはべらせ、異論は排す。田中氏が実権を握るようになってから体育会の人間が学内で幅を利かせ、上意下達の権力構造がつくられていったと証言する大学関係者も。今回の事件をめぐっては、渦中の人物からの自民党議員への多額献金も本紙の調べでわかっています▼青森から上京し、青春を土俵に注いできたという田中氏。「相撲の稽古というのは土俵の中でやるばかりではない。土俵の外、つまり教育も重要です」と。その果てが私腹を肥やすことだとしたら、あまりにも情けない。


pageup