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2021年11月29日(月)

きょうの潮流

 老百姓(ラオパイシン)とは、中国語で庶民のことです。中国戦線に従軍した作家の田村泰次郎は短編「裸女のいる隊列」で「老百姓、――日本軍にとって、この言葉は、なんの人格的な意味もなかった」と書いています▼「日本軍に殺された住民の数は、恐らく日本軍と闘って死んだ中国軍の兵隊の数よりも多いのではないだろうか」「住民たちに対する日本軍の身の毛のよだつような所業は、私の七年間にわたる戦場生活で幾場面も見ている」▼田村はある事件を回想します。真冬の山道を行軍する中隊が何人もの女たちを全裸で連行。兵隊たちに「この姑娘(クーニャン)たちが抱きたかったら、へたばるんじゃないぞ」と、鼻の先のニンジンとして。娘を追ってきた老いた母親が泣きすがるのを、中隊長は平然と殺します▼田村泰次郎を研究してきた三重大学の尾西康充教授は「衝撃的な内容ですが、これは実体験です」と。「日本軍の加害を書いた文学は圧倒的に少ない。南方での玉砕などが多く、中国で何があったかはほとんど描かれていません。田村の小説は貴重な証言です」▼あす30日は田村泰次郎の生誕110年にあたります。娼婦(しょうふ)たちを描いた「肉体の門」など風俗小説で有名ですが、優れた戦争小説も数多く残しました▼「田村は大陸に残りますが、所属部隊は沖縄に派遣された。最初にやったのが慰安所づくりです。中国での行いが沖縄でも再現された。そのことも知ってほしい」と尾西さん。「文学を通じて血で血を洗う戦争の現実を追体験してほしい」


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