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2021年11月29日(月)

主張

診療報酬改定議論

医療の疲弊に拍車をかけるな

 公的医療保険で受診する際の価格である診療報酬の2022年度改定をめぐる議論が本格化しています。診療報酬改定は原則2年に1度です。今回は新型コロナ感染が拡大してから初の改定です。コロナで深く傷ついた医療機関を支えるとともに、感染から国民の命と健康を守る医療提供体制を強化する機会にすることが必要です。ところが岸田文雄政権は、医療現場が願う大幅引き上げに応える姿勢がありません。財務省は「マイナス改定」を強く主張します。診療報酬減額は、医療の疲弊に拍車をかけることにしかなりません。抜本的に引き上げるべきです。

財務省は減額を強く主張

 診療報酬は外来、入院、検査、手術、投薬などについて健保や国保から医療機関に支払われます(患者窓口負担1~3割)。診療報酬総額の改定率は、年末の政府予算の編成の中で決定され、医療行為や薬の個別の単価は、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を経て、来年2月ごろ決められます。

 診療報酬は、国民に提供される医療の水準に直結します。自民・公明政権が社会保障削減路線にもとづき診療報酬の減額・抑制を繰り返したため、多くの医療機関は余裕のない経営を強いられてきました。産科や小児科などがなくなり、住民の命と健康に大きな影響を与えた地域も生まれました。

 コロナ感染の広がりは、低い診療報酬で困難にあった医療現場に追い打ちをかけました。コロナ対応に直接あたった医療機関に負担と矛盾が集中しただけでなく、受診控えなどにより、ほとんどの医療機関が打撃を受けています。

 厚労省の医療機関の20年度の経営状況調査では、一般病院の1施設あたりの利益率は6・9%の赤字でした。コロナ関連補助金でぎりぎり0・4%の黒字になりましたが、運営主体別でみると国公立は補助金を加えても5・2%の赤字のままというのが実態です。受診回数もコロナ流行前にはいまも戻っておらず、補助金が終了した場合は、医療機関は極めて厳しい状態に陥ることが懸念されます。

 医療現場は「補助金頼みの経営は非常に不安定」として、診療報酬で成り立つようなプラス改定の必要性を訴えます。感染第6波に備えた体制を構築し、医療の安全と質を高めるためにも診療報酬の引き上げが急務となっています。

 ところが財務省は、診療報酬を減らしても医療機関は収入増ができるという機械的試算を持ち出し「躊躇(ちゅうちょ)なく『マイナス改定』をすべきである」(8日の財政制度等審議会の資料)と強硬に要求しています。現場の苦境をみない減額ありきの姿勢は許されません。マイナス改定では医療従事者の処遇改善にもつながりません。看護師らの賃上げを言うなら、プラス改定を行うことは最低限の責任です。

国民の負担軽減と一体で

 日本医師会の中川俊男会長は「平時の医療提供体制の余力こそが有事の際の対応力に直結する」と力説します。コロナ禍の教訓に学び、医療現場がゆとりを持てる体制を整えることができるよう、診療報酬の引き上げに転じる時です。その際、国民の経済的な負担が増えないようにする窓口払いの軽減措置などが欠かせません。75歳以上の医療費窓口負担の2倍化は中止することが求められます。


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