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2021年11月20日(土)

きょうの潮流

 1年がすぎた今も、バス停の横にはたくさんの花が手向けられていました。そこにたどり着き、無残にも命を奪われた彼女の身の上に思いをはせながら▼昨年11月16日の早朝。東京・渋谷区幡ケ谷(はたがや)のバス停で、路上生活をしていた64歳の女性が頭を殴られ死亡しました。所持金はわずか8円。コロナでバイト先の仕事も失い、スーツケースを引きながら街中を転々とし、夜の間だけそこで体を休めていたそうです▼劇団に入り、アナウンサーや声優を夢みて広島から上京。しかし離婚後は定職につけず、苦しい生活が続きました。4年前には家賃を払えずアパートも退去。炊き出しなどで命をつないでいたとみられます▼そして、被害に。助けを求められず、救いの手も届かなかった末の悲劇。「彼女は私だ」の声とともに事件後は抗議行動も起き、ホームレス支援の活動に参加する若者も増えました。だれもが安心して生きられる社会をめざして▼「高齢者の貧困がものすごい勢いで増えている」。きのうまでの3日間、厚労省前で高齢者たちの座り込みがありました。負担が増すばかりの医療や介護、減らされる年金。命や健康、人権をめぐるたたかいはここでも▼事件で逮捕された男は彼女の存在が「邪魔だった」と供述しています。それほどの憎しみはどこから…。現場のバス停は甲州街道に面し、明かりや人通りもある場所でした。少しでも孤独をまぎらわせ、社会とつながっていることを感じたかった。そんな願いが聞こえてくるような。


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