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2021年11月3日(水)

きょうの潮流

 この年、この地方は動物にとっても、人間にとっても、ゆたかな年であった―。大作『カムイ伝』は、こんな書き出しで始まります。白土三平さんの訃報に接し、久しぶりに開いてみました▼厳しい身分社会にあった江戸時代を背景に、虐げられた人々の悲哀と自由をもとめてたたかう姿を活写した劇画。そこには自然の営みや、そのなかで生きる人間のくらしが丹念に描かれています▼「カムイの持ち続けるものは『自由』ではなく『批判』のエネルギーである」。講義で使ったことがある法政大学前総長の田中優子さんは、『カムイ伝』は江戸時代を舞台にしながら、その向こうに近現代の格差・階級社会を見ていると▼白土さんの父・岡本唐貴は戦前、プロレタリア美術運動に参加した画家でした。小林多喜二が特高に虐殺されたとき彼の家にかけつけ、死に顔の油絵を残した人物で自身も拷問にあっています。権力の弾圧や困窮生活を白土さんは身をもって味わってきました▼差別と屈辱の世界からぬけだし、己の自由と誇りを手にしようとしたカムイ。その生き方を通して白土さんは人間とは何か、なぜ人は人を支配するのかを問いかけました▼文化の日のきょうは、日本国憲法の公布から75年にあたります。現代社会はカムイの時代の人びとを苦しめた身分制度もなくなり、人権も憲法によって保障されています。同時に、それを守り生かすためのたたかいも新たな格差のもとで続いています。今もどこかにカムイが息づいているように。


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