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2021年10月12日(火)

きょうの潮流

 最後の演目は「猫の皿」でした。名品の皿をめぐり、仲買人と店主がだましだまされるお話。そこに今の世相をどう映し込もうとしたのでしょうか▼落語家の柳家小三治(やなぎや・こさんじ)さんが亡くなりました。81歳まで高座に上がり続け、命尽きる直前まで次の落語を楽しみにしていたといいます。人間がかもし出すおかしみを追い求め、コロナ禍でも「こういう時代の、こういう時に何をどうやる」とつねに自問する姿がありました▼名人芸といわれ、数々の賞を受けても飾らない人柄はそのまま。人間国宝に選ばれた際には、本当にうれしいのは肩書ではない、寄席に来てくれる一人ひとりが喜んでくれることが勲章と話していました▼「人間を理解できなきゃ、落語はできない」。自伝には人の心をのみ込む難しさも。「落語は人生の、社会の縮図。いつの間にか人が生きるということの根本まで考えるようになる」(『どこからお話ししましょうか』)▼枕といわれる、本題に入る前の話も人気でした。身の回りのことや趣味、世間の関心事をネタにした話は本になるほどおもしろい。7年前の師走例会では直前に行われた衆院選挙に絡んで、こんな枕を。「今回、共産党に1票を投じました。現政権への反対票です」▼こつこつと生きている国民を支えている人が多いことを幸せだと考えることができる世の中。そんな日が、いつまでも実現しないことへの怒りを込めながら。市井に生きるひとりの庶民として、人の営みを温かく語り続けた落語人生でした。


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