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2021年10月8日(金)

きょうの潮流

 芥川龍之介の「羅生門」、夏目漱石の「夢十夜」、志賀直哉の「城の崎にて」。こうした作品を載せた高校教科書が混乱を招いています▼国語の教科書に小説がでるのは当たり前のはず。しかし新しい学習指導要領に基づく「現代の国語」は、「実用的な文章」を扱う科目とされ、小説など文学は扱わないことになっていました▼ところがある教科書会社が「羅生門」など5編の小説を載せた教科書を申請して、検定に合格してしまいます。現場からは歓迎され、採用する学校が続出しました。文科省の方針通り小説を載せなかった他の会社は不満たらたら▼文科省は問題の教科書に載った小説について「言語活動」を行うためのものだと言い訳し、小説は「読む」ためでなく「書く」ための教材だと通知した教育委員会も。この教科書を出した会社は「従来の教科書のイメージで利用可能」としていた宣伝を文科省の指導でやめざるをえませんでした▼「現代の国語」は、「実用文」を重視するという国語教育「改革」の目玉でした。それを先取りした大学入試のプレテストや指導計画は、スピーチの仕方や契約書の読み方、申請文書の書き方など、ビジネス界の人材づくりのような内容がてんこ盛り。「じっくり文章を読む力が育たない」と批判が出ていました▼小説を載せた教科書の人気が出たのは、現場がそれを求めていることの証し。教科書や授業のやり方の細部にまで国が口を出すのでなく、現場の実情にあった教育をする自由こそ必要です。


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