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2021年9月19日(日)

きょうの潮流

 1台の車によって失われた命、幸せだった日々。2年5カ月前に起きた東京・池袋の暴走事故は、衝撃とともに社会のあり方を問い直しました▼母子ふたりが犠牲となり、9人が重軽傷を負った交通事故。過失をめぐる裁判で90歳の被告に言い渡されていた禁錮5年の実刑判決が確定しました。公判では無罪を主張していましたが、「罪を償いたい」と控訴しませんでした▼妻と娘を一瞬にして亡くした松永拓也さんは記者会見で「大事なことは、この事故を教訓として未来に起こる事故を防ぐこと」だと訴えました。いまの交通社会で生きている以上、だれしもが被害者にも加害者にもなりえるのだと▼事件の後、免許証の返納者が増え19年には過去最高の60万人、コロナ禍の昨年も55万人をこえました。しかし、地域の実情や個々の事情によってハンドルを握らざるをえない人も多い。長く解決されない課題には、いつまでも車依存から抜け出さない国の怠慢があります▼足となる公共交通機関は廃れる一方。道路も車優先で安全よりも利便性を追い求める。そんなことで住民の命を守れるのか。高齢ドライバーの問題だけではない、こうした環境面も含めて考えてほしい。松永さんもそう語っています▼現場に置かれた白い球体。それは日常を表し、少しくぼんだ部分は事故をイメージしているそうです。そこに雨水がたまり流れ落ちると悲しみの涙となり、地面に伝い落ちた涙の滴は種となる。「交通事故ゼロの未来」へと向かう希望の芽に。


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