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2021年8月3日(火)

原水爆禁止2021年世界大会

国際会議 主催者声明

 原水爆禁止2021年世界大会・国際会議で発表された、同大会実行委員会の主催者声明は次のとおりです。


 核兵器禁止条約の発効という歴史的な達成をうけて開催された原水爆禁止2021年世界大会は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、世界の多くの人々が人間の尊厳への思いを深めつつあるいま、核兵器の完全廃絶に向けて前進する誓いを新たにしています。

 アメリカ軍によって広島(8月6日)と長崎(8月9日)に原子爆弾が投下されてから76年目を迎えます。2発の核爆弾は、一瞬にして都市を破壊し尽くし、1945年末までに21万もの人々の命を奪いました。その圧倒的多数は、女性や高齢者、そして子どもなどの何の罪もない市民でした。人々は生きながらに焼かれ、放射線に肉体を蝕(むしば)まれました。それはこの世の「地獄」というべき惨状でした。かつていかなる兵器もこのように大量で、無差別な破壊と殺りくを行うことは出来ませんでした。かろうじて生き残った人も、その後遺症に苦しみ、愛する人を奪われた心の傷を抱えて生きてきました。しかし、平均年齢83歳をこえる被爆者たちは、いまなおその悲劇的な体験を語り、「核兵器と人類は共存できない」と警告しつづけています。私たちは被爆者とともに、世界に訴えます。この悲劇を二度と繰り返してはなりません。人類生存とその未来のために、核兵器廃絶をめざして行動しましょう。

 人類はいまだに核兵器による絶滅の脅威にさらされています。世界には、いまなお1万3000発の核弾頭が存在しています。核大国が対立し、にらみ合うなかで、核兵器使用の危険が高まっています。核兵器の先制使用政策を維持する米ロ両国では、約2000発の核ミサイルが警告に反応して即座に発射できる状態にあると言われています。中国は核五大国で唯一核弾頭数を増加させ、イギリスは潜水艦発射ミサイル用の核弾頭数の上限を引き上げました。フランスも共同の核作戦における役割拡大を狙っています。インド・パキスタン間の緊張、未解決の朝鮮半島の非核化問題、パレスチナとの対立を深めるイスラエルなど、核使用の火種が地域にも存在しています。国際紛争の平和的解決は国際政治の原則です。国連憲章と国際法を遵守し、武力紛争とそれにつながる一切の行動をすみやかに停止すべきです。核兵器の増強、開発、配備もただちにやめるよう求めます。核兵器で守れる平和はありません。軍事力で威嚇しあうことは、核使用の危険を高めるだけです。壊滅的な被害をもたらす核戦争に、勝者はいません。この現実を直視し、「核抑止力」論の危険な幻想から脱却すべきです。

 核兵器禁止条約が今年1月22日に発効し、核兵器は道義的に非難されるだけでなく、国際法上も史上初めて違法となりました。この条約発効のために尽力した諸国政府と被爆者、反核平和運動はじめ平和を愛するすべての人々に、心からの敬意と連帯を表明します。禁止条約の署名、締約国が世界に広がれば広がるほど、核兵器の違法性はいっそう確かなものとなります。そして、国際的に包囲される中で、核保有国やその「核抑止力」に依存する国も、政策的に大きな影響を受けることとなるでしょう。私たちは、諸国政府に禁止条約への支持と参加をよびかけ、その拡大のために力を尽くします。禁止条約を力に、核兵器廃絶へと前進しましよう。

 核保有国は、核兵器禁止条約の発効に示された世界の世論に応えなければなりません。とりわけ核五大国は、核不拡散条約(NPT)の核軍縮交渉義務(第6条)をすみやかに履行すべきです。そして、2022年に予定されるNPT再検討会議では、これまでの会議の合意(「自国核兵器の完全廃絶を達成するという明確な約束」(2000年「最終文書」)、「核兵器のない世界の平和と安全の達成」とそのために「必要な枠組みを創設する特別な努力」(2010年「最終文書」)、中東非核兵器地帯の設立)を確認、実行し、さらに前進させることが求められています。核兵器国はくりかえし、核兵器廃絶を約束してきました。私たちは、その合意と義務を誠実に果たすことを強く求めます。

 核兵器を使わせず、その完全廃絶へと前進するためには、国際的な世論の発展とともに、核保有国や核依存国の政治を変えることが欠かせません。核兵器禁止条約が成立して以降、NATO(北大西洋条約機構)諸国の中にも、禁止条約支持の世論の広がりを背景にした積極的な変化が生まれています。禁止条約参加を支持する圧倒的な世論を築き、核固執の政治から脱却するときです。

 とりわけ、核兵器の破滅的な結末を、身をもって知る被爆国・日本の動向は大きな意味をもちます。日本政府が、国民世論に応えて禁止条約を支持し、「核抑止力」への依存から脱却するならば、核兵器廃絶への世界の流れを大きく後押しすることになるでしょう。緊張が高まる北東アジアの情勢にも前向きな変化をもたらすに違いありません。私たちは思想、信条、党派を超えて世論をひろげ、禁止条約を拒み続ける今の政治を転換するために行動するよう国民の皆さんによびかけます。まもなくたたかわれる総選挙がその大きな転機となることを希望します。また、沖縄・辺野古の米軍新基地建設、日本国憲法第9条の改定、敵基地攻撃用ミサイルの開発・配備など、日米軍事同盟のもとで日本を「戦争する国」にする動きに反対する運動との連帯を発展させます。

 COVID―19パンデミックのもとで、いまだに多くの人々が命と健康を失うとともに、格差の拡大と貧困、失業などに苦しんでいます。その一方で、核兵器を含む世界の軍事費は米ソ対立時代の1988年以来最大の1兆9810億ドル(約213兆円)にのぼり、各地では紛争が続いています。世界で420万人をこえる死者を出しているコロナ禍に、軍事力はまったく無力です。求められているのは、大幅な軍縮と紛争の平和解決、パンデミック終息と人々の命とくらしを守るために力を集中することです。そして、各国が平等な立場で協力する世界、国連憲章がめざす平和の秩序です。禁止条約の発効は、大国主導から、すべての国が平等に参加する世界への展望を示しています。それを可能にしたのが市民社会と諸国政府の共同でした。

 核大国の横暴をうち破り、核兵器による絶滅の脅威から世界を解放するために、いまこそ立ち上がりましょう。私たちはコロナ禍後の希望ある世界、「核兵器のない平和で公正な世界」をめざして、以下の行動にとりくむことをよびかけます。

 ――被爆者、核実験被害者の証言や原爆パネル展などに積極的にとりくもう。核兵器使用の非人道的な結末を普及する活動を内外に広げよう。

 ――国際的にも、各国でも、禁止条約への支持と参加を求める世論をひろげる行動にとりくもう。とりわけ核保有国や「核の傘」に依存する国々の条約参加をめざす活動を強化しよう。

 ――第76回国連総会、NPT再検討会議、禁止条約締約国会議などを節目に、諸国政府と市民社会の共同を発展させよう。

 ――軍事費の削減、外国軍事基地の撤去、軍事同盟の解消、枯葉剤など戦争被害者への補償・支援と被害の根絶、平和教育の推進など、反戦・平和の諸課題にもとづく運動との共同を発展させよう。

 ――核兵器廃絶を共通の要求とする核兵器廃絶国際共同行動「平和の波」行動(2021年8月2日~9日)を成功させよう。

 ――「核兵器のない世界」を求める運動を、くらしと命、人権を守り、気候変動の阻止、ジェンダー平等、自由と民主主義を求める運動など、あらゆる階層の人々の広範な運動と連帯してさらに発展させよう。

 私たちは、被爆者とともに、そして高校生、大学生をはじめ未来を担う若い世代とともに、これらの行動の先頭に立つ決意を表明するものです。

 原水爆禁止世界大会実行委員会


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