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2021年7月24日(土)

きょうの潮流

 五輪ファーストの政策の陰でこんな犠牲があったのか、とやりきれない思いになりました。23日の開会式に併せ、緊急上映されたドキュメンタリー映画「東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート」(青山真也監督)です▼東京五輪に伴う再開発で、「終(つい)の住処(すみか)」を奪われた住民たちの物語。国立競技場に隣接するそのアパートは1964年、オリンピック開発の一環で建てられました。それが今度は取り壊しに。映画は五輪によって“排除”された人々の、苦悩の日々を記録します▼平均年齢65歳以上。片腕のない不自由な体でリヤカーに荷物を積み、移転先に運ぶ男性。ナレーションのない淡々とした映像が胸に迫ります。納得のいく説明を求め、住民が3度にわたって知事あてに要望書を出しても回答はなし。合意のないまま強行する姿勢は、この頃から始まっていました▼1964年の東京大会の際も、立ち退き問題がありました。NHKの「映像の世紀プレミアム第15集」に当時の東京大改造の様子が収められています。青山監督は「霞ヶ丘アパートのことも、オリンピックが始まったら歓声とともに忘れられてしまうのではないかという危機感からこの映画を撮り始めた」と▼64年の東京大会は、ひずみを残しながらも多くの人に勇気と希望を与えました。しかし今回は違う。中止を求める声は止まらず、海外メディアからは「呪われた大会」と▼今起きていること、今までに起きたこと、今から起きること、すべての記録と記憶を―。


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