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2021年7月19日(月)

きょうの潮流

 76年前の8月6日、米国が原爆を投下した広島市から約17キロ離れた可部町。「ピカッと光り防空壕(ごう)に逃げた。壕から出ると空は黒い雲に覆われて薄暗かった。帰る途中に灰と黒い雨が降ってきた」▼当時7歳で、「黒い雨」訴訟原告の森園カズ子さんの記憶です。黒い雨に汚れた田畑の実りが食卓に並び、黒い雨が混ざった沢の水を飲み水にした生活でした▼広島高裁は「黒い雨」に打たれた人らを被爆者だと認める画期的な判決を下しました。直接打たれなくても、「放射性微粒子が混入した飲料水や付着した野菜を摂取したりして、内部被曝(ひばく)による健康被害を受けた」人も認定。原爆の被爆者だけでなく、核実験による被曝者の救済にもつながる論理です▼判決は、国側の“被爆者認定は科学的な裏付けが必要”との主張を退けました。国の“裏付け”とは、非科学的で米国に追随したものです。きれいな楕円(だえん)形の「黒い雨」降雨地域も実態に合わないというのが、気象の専門家が一致します▼米国は「核兵器は通常兵器と同じ」と、放射性降下物による被曝を否定してきました。「黒い雨」も「その雨は泥によって黒いのであって放射能によるものでない」と説明しました。国側も「黒い雨の多くは火災のすすだ」と主張したのです▼発効した核兵器禁止条約は、核実験被害者への救済を明確に盛り込んでおり、その視点からも被爆者援護の抜本的見直しは急務です。狭く、小さく、軽く捉えるのではなく、被害の実相に応える人道的な施策を。


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