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2021年7月16日(金)

EU、温室ガスゼロ包括案

35年にガソリン車販売禁止 30年までに再生エネ40%に

“次世代への使命”

 【フライブルク(ドイツ南西部)=桑野白馬】欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減し、2050年までに「実質ゼロ」とするための包括案を発表しました。気候変動対策を世界でリードしていく姿勢を示すもので、目標達成に向け、ガソリン車やディーゼル車の新車販売はハイブリッド車を含め、35年に事実上禁止する方針です。


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 欧州委のフォンデアライエン委員長は14日の記者会見で「化石燃料を使う経済はすでに限界に来た」と強調。「脱炭素化は、われわれに課せられた使命だ。現在の世代だけでなく、子どもや孫の世代の幸福に関わっている」と述べて、速やかに脱炭素社会を目指すと表明しました。

 欧州委の提案は、今後加盟27カ国や欧州議会の承認を経て決定されます。決定までには2年以上かかるとも指摘されています。

 提案は、運輸・交通や建物の暖房など分野ごとに細かく排出削減量を定めています。各国には、1人当たりの経済生産高に応じて、削減量が割り当てられます。

 欧州委はスウェーデン、フィンランド、ドイツ、デンマーク、ルクセンブルクに対し、30年までに05年比で50%の排出量削減を義務付けることを提案しました。他方、経済力の遅れた中欧や東欧諸国でも温室効果ガス排出量目標が引き上げられることになり、これら諸国からの反発も予想されます。

 さらに、排出削減規制の緩やかな域外諸国からの輸入品には炭素価格を上乗せし、域内企業の競争力の維持を図る「炭素国境調整措置(国境炭素税)」を23年から段階的に実施します。3年間の移行期間を設け、26年から鉄鋼やアルミニウム、電力、セメント、肥料を対象にして実際に賦課が始まります。

 新たな貿易摩擦となる恐れが指摘されていますが、EUとしては世界により厳しい排出削減に取り組むよう働き掛ける目的もあります。

 環境団体からは、目標が不十分との指摘があります。グリーンピースのEUディレクター、ジョルゴ・リス氏は声明で「この政策を祝うことは、高跳びの選手がバーの下を走っただけでメダルを与えるようなものだ」と批判しています。


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