2021年7月10日(土)
きょうの潮流
アースカラーといわれる色があります。空や海、大地や植物といった地球の自然がもつ色合いで、落ち着いた優しげな雰囲気をかもし出すといいます▼白、黄緑、グレー、深緑、濃茶。隈研吾さんが設計した国立競技場の客席は5色のアースカラーを組み合わせています。配色の妙は森の木漏れ日のイメージとともに、もう一つの効果をもたらしました。それは、客席が人で埋まっているように見えること▼いまとなっては何かを暗示していたのか。東京五輪のほとんどの会場で無観客開催が決まりました。感染拡大に歯止めがかからず、開幕2週間前の方針転換です。緊急事態宣言下の強行といい、政府や都のドタバタ迷走ぶりが際立ちます▼すでに販売されているという363万枚の観戦チケットをはじめ混乱は必至。宙に浮いたボランティアはどうなるのか。大量の予約が消えた宿泊施設、当て込んでいた観光業や飲食店からは「大打撃だ」の悲鳴が上がります▼国連総会は8日、東京オリパラの期間中に世界の紛争を休戦するよう、すべての加盟国に呼びかけました。五輪休戦です。もともとは、古代五輪の際に競技者や観客の行き来の安全を確保するために戦争を休止したことから始まりました▼いま安全を守るというならば、五輪自体を休止することです。まだ間に合います。国の責任として中止を決断し、世界中でコロナ感染が収まった後に再び手をあげればいい。今度はまちがいなく、人類のアースカラーに染まった祝福の場として。








