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2021年6月20日(日)

きょうの潮流

 安野輝子さんの戦争は、終戦の1カ月前から始まりました。鹿児島の自宅で遊んでいるとき、米軍が落とした爆弾によって左足を失いました。まだ6歳でした▼生死をさまよったあの日から76年。「松葉づえと義足で、不自由と痛みを道連れに必死に生きてきた」。それなのに国からはひと言のなぐさめも援助もありませんでした。「ほんの一瞬でも、この国に生まれてきてよかったという気持ちを味わいたい」▼宿願はまたもかないませんでした。戦争中の空襲などによる民間被害者を救済する法案。超党派でまとめながら自民党内の手続きが進まず国会に提出できませんでした。ほかの戦後補償につながるとの懸念があったといいます▼これまで国は、民間人には雇用関係がなかったとして耐え忍ぶことを押しつけ、補償に応じてきませんでした。一方で元軍人や遺族らにたいしては60兆円をこえる手厚い援護を行う差別を続けてきました▼国が起こした戦争によって被害をうけ、支えもなく長く苦しめられてきた人たち。いまだに放置する背景には戦争への無反省さがあります。高齢の被害者からは「私たちには時間がない。死ぬのを待っているのか」という嘆きも▼先の国会では政府提出のほとんどの法案が成立しましたが、多くはくらしや人権を圧迫するものでした。自民党によって見送られたなかには性的少数者への差別をなくすための法案も。「私の戦争はまだ終わりません」。安野さんの無念にはこの国のゆがんだ姿が表れています。


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