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2021年6月6日(日)

きょうの潮流

 テニスでは5セットまでもつれた試合をマラソンマッチと呼びます。長く苦しい道のり。ときに数時間にも及ぶたたかいは、体力だけでなく、心のタフさも求められます▼「魂が抜けた」。全仏テニスでベスト16に進んだ錦織圭選手が、初戦から2試合続いたマラソンマッチの心境をそう表現していました。劣勢のつらい場面では、まだたたかいたいかと、自分に問いかけたといいます▼スポーツ選手は精神面も強い。数々の苦境をのりこえ、大舞台を経験しているトップ選手ほど―。そう思い込んでいる人は多いのではないか。しかし近年、一概にそうはいえないことが各国の研究でわかってきました▼オーストラリアでは五輪代表選手の半数近くが何らかの症状を抱えていました。うつ病や摂食障害、心理的なストレス…。イギリスでも多くのトップ選手が不安を訴えています。さまざまなスポーツの国際機関も選手の身体的な健康について提言を出し始めました(『アスリートのメンタルは強いのか?』)▼過度の重圧や勝利至上。華々しさの裏で重くのしかかる負担。長くうつに悩んでいたことを明かした大坂なおみ選手は、アスリートの心の健康に改めて目をむけさせました。それが見過ごせない問題だからこそ、寄り添う声がひろがったのです▼みずからの心の不調をさらけだすことはトップ選手ほど難しいといわれます。大坂選手の告白は同じような状態に苦しむ人たちに勇気を与えました。本当の「強さ」とは何かを投げかけながら。


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