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2021年4月29日(木)

校閲の目

「込む」と「混む」

 新型コロナウイルスの猛威は収まる気配がありません。ところが通勤で使っている電車は昨年の緊急事態宣言中とは打って変わって、たいへん混雑しています。今なら「密です」で伝わりますが「電車が込んでいる」と書くと、「混んでいる」の間違いではないか、という声が届きます。

 戦前の国語辞書を見ると「こむ」には「込」「籠」という漢字が使われています。ある場所いっぱいに人で混雑する意味で「込合ふ」はありますが「混む」は見当たりません。明治の文豪、夏目漱石も「夜の急行は込む」などと書いていました。

 当用漢字、常用漢字では「混」の読みは「コン、まじる、まざる、まぜる」で、「こむ」はありません。新聞でも「人込み」としていました。

 戦後の国語辞書も「込む」でしたが、「混雑」から類推して「混む」という読み方が生まれ、1973年には広辞林が「混む」の用例を載せ、広辞苑も83年の第3版から見出し語に「混む」を掲げるように変わってきました。

 「混む」の使用が広がることにより、2010年の常用漢字の改定で「混」に「こむ」の読みが追加されました。そのため新聞でも「混み合う」「人混み」と書けるようになったのです。ただ「人込み」は本来の表記であり、誤りではありません。(河邑哲也)


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