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2021年3月5日(金)

五輪5者会談 国内観客だけでも課題山積

 「安全、安心」とはほど遠い―。決定を聞いての率直な思いです。

 5者会談は25日まで海外の観客を見送る方向で調整に入りました。しかし、これで国民の不安を取り除けるとはとても思えません。

 そもそも海外の観客の対応には大きな問題がありました。約100万人分のチケットが販売されている海外客は、通常入国の際に課される14日間の隔離措置が免除されています。さらに公共交通機関の利用も移動の自由もOKという信じられない対応でした。

 渡航者に隔離期間が必要なのは、コロナ陽性者を水際で食い止めるためです。東京五輪のこの措置は、医療関係者からも「考えられない」「論外に近い」と驚かれていました。

 これまでまったく手をつけなかったこと自体が問われるべきで、これをもって国民の不安を払拭(ふっしょく)するものにはなりえないのは当然のことです。

 海外の観客を見送っても、感染拡大につながる課題は山積しています。

 一つは国内の観客です。すでに五輪だけで360万枚を超えるチケットが販売されています。これだけの人々が全国から首都圏に向けて移動すれば、「Go To 五輪」となる懸念があります。

 さらに無観客にしたとしても問題は解消されません。海外から選手・チーム役員約1万8千人、メディア約2万5千人、海外ボランティア3万人あまりなどの数万単位の入国者があるからです。しかもその対応も甘く、2月に大会を開いた全豪テニスの責任者から、選手らの感染対策が「とても機能するとは思えない」と批判されています。

 橋本聖子会長は「国民に不安がある以上、安心と安全が保たれる実感がないと難しい」と話しましたが、不安の根本にあるのはコロナの現状です。ここが解決されなければその払拭は難しい。

 2日、日米欧6カ国の国際世論調査(ケクストCNC)が発表されました。今夏の五輪開催について、ほとんどで反対が賛成を大きく上回る結果でした。日本は反対56%にたいし、賛成は16%のみ。米国だけが賛否同数で、英国、ドイツ、フランスなどは反対が賛成の1・5倍から3倍にも上っています。

 いま感染力が高い変異株の広がりが懸念され、世界でも数カ月先のことも見通せません。そのもとでこれだけ強い反対の世論があり、五輪を強行すればどうなるか。世界の人々から支持されず、歓迎されない五輪となります。それは選手にとって不幸な事態となり、五輪自体にも大きな傷や禍根を残すことになりかねません。

 その意味でも組織委員会や国際オリンピック委員会には、命、健康を第一に据えた賢明な選択が求められています。(和泉民郎)


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