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2021年2月22日(月)

みんな立ち上がった

ミャンマー国民の民主化闘争

 2月1日に国軍が起こしたクーデターに抗議するミャンマーのデモは多彩です。色鮮やかな民族衣装、医療、教育、法曹、エンジニアなどそれぞれの職場の制服、あるいはスポーツのユニホームやドレス姿での行進。「私たちに銃はないが、音楽がある」と掲げた音楽家たちの路上コンサート。デモや集会には常に水や食料を配る人、ごみを拾う人たちの支えがあり、子どもたちが路上でデモ参加者のバイクを無償で修理すると張り紙を出したこともありました。

 市民のデモは、のべ数百万人が参加する国民的運動となり、20日以上経過してなお衰える気配がありません。

 「2月1日以降、ミャンマーのほとんどの人々の生活は恐怖、怒り―たまに明るさ―、独裁体制を終わらせる決意のサイクルとなった」。独立系メディア『イラワジ』誌英語版編集長のチョー・ゾウ・モー氏は19日付論評で、「ごく一握りの国軍関係者らを除く、国民みんな」の心情を描きました。

 1962年の最初のクーデターから約50年に及んだ軍政を耐え、2011年にようやく始まった民主主義。国民がもったワクワク感は、今回のクーデターで「突如として、残酷に奪い取られ」「だれもが不安とともに朝を迎えるようになった」。しかし―。

 「こうした消極的な感情は、積極的なエネルギーへと転換される」

 「夜明けとともに、数十万の人々が家を出て、全国の街頭に出る。…多様な人々が、正義と権利を取り戻すためにたたかうという同じ意思を共有している」

 ミャンマー国民には、長い民主化闘争の歴史で培われてきた強さがあります。

非暴力・不服従の決意

スー・チー氏の信念 受け継ぐ

 いま多くの国民に「母」と呼ばれるアウン・サン・スー・チー氏は、1988年に民主化運動に加わり翌年自宅軟禁されるまでの短い間、熱心に全国を遊説して回りました。彼女が民衆に訴えたのは、独裁下にあるミャンマーで民主主義を得るのに必要な、一人ひとりの決意と覚悟でした。

 「人々が勇気をもって行動していればいるほど、いっそうの権利を獲得し…恐れていれば恐れているだけ、ますます抑圧される。民主主義を欲するのであれば勇気が必要です」

 「無鉄砲なことをする勇気ではありません。正しいことを行える勇気を言っているのです」

 「自分の自由を獲得するように努力する習性を、私たちは身につけなければなりません」

 「民主主義…を欲する人々は、自分自身も政治に参加しなければなりません。自分自身の政治的見解を持ち、(それに)基づいて、身を犠牲にする覚悟を持たなければなりません」

 「正しく行動してこそ尊厳があるのだということを、子どもたちがわかるように育てなければなりません」(1989年4月。伊野憲治編訳『アウンサンスーチー演説集』みすず書房より。一部要約。以下同)

 軍政側がさまざまな弾圧を仕掛ける中、若者を主体とする今回の抗議と不服従の国民的運動が非暴力と平和的行動に徹しているのも、スー・チー氏と民主化運動の指導者たちの信念を基盤としています。89年7月の演説で彼女はこう訴えました。

 「騒乱を起こすのではなく、穏やかに規律をもって、平和的な手段で、侵すべからざる国民の諸権利を獲得するために、不当な命令・権力に反抗していく」

 「引き続き、勇気をもって、粘り強く、正しく行動していってください。脅しをあまり恐れないでください。私たちは正しいことだけを行っていきます。平和的に、規律をもって、正しい行動をしていくというのが、私たちの信念です」

 「現在、国民を銃によって抑え込もうとしている集団がいます。…だから、注意していなければなりません。私たちの側が行き過ぎないようにしてください。自分の側に誤りがないようにしてください。政治というものは、長期的な仕事なのです」(89年7月)

 スー・チー氏は今回、国軍に拘束される前に準備していたという「クーデターを受け入れず、全力で反抗すること」を呼びかける短いメッセージを発信しました。国民は、それが平和的な反抗を意味すると迷いなく受け止め、実践しました。

 いまミャンマーでは公務員の「不服従運動」とゼネストが大きく拡大しています。「不当な命令と権力への反抗」に踏み出し、デモ行進する公務員の中には中央省庁の役人や警察官の姿もあります。

 ジャーナリストのモン・モン・ミャ氏は『イラワジ』誌上で不服従運動をこう描写しています。

 「軍政は銀行、医療、運輸の維持に失敗し、国を統治しているとうそぶくことができなくなった。すべての命令は絶えることのない不服従に遭っている」

 「あらゆる職業や立場の国民に、軍の支配を終わらせる決意がある。人々は、独裁が倒れるまで不服従運動を続ける」

 (ハノイ=井上 歩)


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