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2021年2月8日(月)

大阪市の権限 条例で奪う

不毛な制度いじりに熱中

維新の会に怒りの声

「いいかげん、コロナ対策に集中せよ」

 コロナ禍で府・市民は大変なのに、いつまで不毛な制度いじりに熱中しているのか。感染者の死亡者が全国最多水準の大阪府で、条例によって大阪市の権限を府が奪おうとする大阪維新の会(代表・吉村洋文知事)の対応に「いいかげん、コロナ対策に集中せよ」との声が強まっています。(渡辺健)


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(写真)「大阪市の権限・財源を奪う条例に反対です」とアピールするSOCs(ソックス、大阪市を守る市民有志)のメンバー=大阪市

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 「住民投票の結論を守ってください」。大阪市をよくする会はいま、松井一郎大阪市長(前維新代表)宛てのこんな署名への賛同を呼びかけています。

 住民投票とは、昨年11月1日に投開票された「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」のこと。結果は廃止に反対が多数となり、大阪市は存続されることになりました。

 民意は明確です。政令指定都市である大阪市の権限と財源をいかした市のまちづくり・くらしの発展を市民は選択しました。

 維新が公明党を抱き込み、「究極の民主主義」として住民投票を2度強行しても結論は同じでした。

 維新が「大阪都」構想と称して実現しようとしたのは、大阪市を廃止し権限と財源を「都」にはならない府に吸い上げ、「1人の指揮官(知事)」の下で好き放題のことができる体制づくりでした。

 この構想が住民投票で否決されたら、それならば議会の多数で施行できる条例で大阪市の権限と財源を奪ってしまえと維新が持ち出したのが「広域一元化条例案」です。

 維新は2月府・市議会に条例案を提出し、議決を経て4月1日に施行しようとしています。

 反対署名には「えっ、住民投票って何だったの」「どこまで民意を無視するのか」など怒りの声が寄せられています。

「市乗っ取りだ」

 条例案は成長戦略とまちづくりを大阪府に一元化するというもの。当初、吉村知事は「大阪都」構想の制度案で整理された大阪市の広域行政427事務、約2000億円を府にそのまま移譲する考えを示していました。

 条例や事務委託による「広域行政一元化」は、政令都市制度を無意味なものにし、大都市法の趣旨も損ねる違法無効なものとの強い批判が起きました。条例案骨子では府への一元化は拠点開発や広域交通網の整備などに絞り込まれましたが、地方自治、地方分権に反することに変わりはありません。しかも規模や対象は拡大されかねません。

 その仕掛けが、「副首都推進本部会議」を条例で格上げし、恒常化させることです。本部長は知事で、副本部長の大阪市長との間に上下関係が生まれます。本部長である知事が会議の事務を掌握し、会議を代表します。本部会議の「合意」が府市のそれぞれの意思決定や両議会の議決を拘束することになれば、団体自治権、議会の議決権を侵害します。維新が「大阪都」構想で描いていた「ひとつの司令塔」につながるものです。

 松井市長は「意思決定する場をつくることが(条例の)一番の狙い」と「副首都推進本部会議」の位置付けを強調。吉村知事も「府市一体で進める仕組みが必要。大阪市域(の広域行政)についても府として責任をもつ」と知事主導の広域行政を力説します。

 市民団体からは「大阪市骨抜き条例だ」「大阪市乗っ取りだ」などの批判の声が湧き上がっています。

 「8区総合区案」については、公明党との調整がつかず、維新は2月議会への提出は見送りましたが、なお提出時期を探っています。

社会的検査急げ

 コロナ対策をめぐる菅義偉政権の無為無策と、大阪では維新による「大阪都」構想優先という「二重の人災」で感染拡大に直面しました。

 「第3波」(昨年10月10日以降)で感染が拡大する中でも維新は住民投票を強行し、しかも「バーチャル都構想」だといってコロナ対策を府任せにし、大阪市の独自策をほとんどしてきませんでした。

 その反省もないことに加え、いま問題になっているのは、維新府政がいまだに社会的検査に踏み出していないことです。

 大阪府の感染による死者は東京都と全国最多を争う水準で推移しています。「第3波」の期間をみると、死者の感染経路は4割弱が不明ですが、5割強は医療機関・高齢者等施設関連です。1人でも死者を減らすためにはクラスター(感染者集団)発生件数の7割弱、クラスターにおける陽性者の8割を占める医療機関・高齢者等施設関連への社会的検査が大阪でこそ求められています。全額国庫負担とすることは当然です。

 吉村知事は、無症状者を含めた社会的検査には消極的な姿勢を取り続ける一方で、病床が逼迫(ひっぱく)する中、病床確保に応じない民間病院には個別に勧告し病院名を公表する姿勢を示しました。これには、病床の稼働率が前提となる診療報酬、急性期病床削減、公立・公的病院の統廃合など「(国の)政策の誤りを反省せず、民間病院攻撃に繋(つな)がる」(大阪府保険医協会)、「地域住民のいのちと健康を守るために自施設の役割を必死に果たそうとしている医療機関、医療従事者の心をくじかないでほしい」(大阪民医連の大島民旗会長)との声が上がりました。府は民間病院で45床の増床にめどがついたとして特措法に基づく「指示」は見送りましたが、医療機関が切望しているのは国と大阪府が感染抑止に全力を挙げることであり、医療機関への減収補填(ほてん)などの支援です。

 大阪市をよくする会の署名は、「広域一元化」などの条例提案を行わず、「政令指定都市・大阪市の力を発揮し、新型コロナウイルス対策に全力をあげること」を求めています。


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