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2021年1月22日(金)

主張

バイデン氏就任

「結束」の実現が問われている

 米国でバイデン新大統領が就任し、「国民の結束」を訴えました。トランプ前政権で深刻化した分断を克服し、国民の負託にどうこたえるのか。具体策が問われます。

議会襲撃事件の余波続く

 大統領選以来、米国社会の分断と対立は、一部トランプ支持者による連邦議事堂襲撃など最悪の展開をみせました。世論はトランプ氏の挑発的言動と暴徒の行動を非難し、議会は2度目の弾劾を決議しました。就任式当日に前大統領が訴追中という異例の事態です。

 トランプ与党だった共和党からの襲撃への批判の声が弱いことは底知れない深刻さを物語ります。襲撃事件後でさえ、有力上院議員、多数の下院議員が、「選挙不正」を理由にバイデン氏の勝利認定に異議を唱え続けました。

 次期大統領を狙う同党有力者たちのこうした行動は、トランプ氏が集めた7400万票という過去最高票を背に、激しい党派対立をあおることが依然として有利だとみていることをうかがわせます。

 一方、大統領選を通じて新しい動きも進行しました。民主党の中で「民主的社会主義」を唱えるサンダース上院議員らのグループは、高学費、公的医療保険の欠如、格差拡大、気候変動などを資本主義の矛盾ととらえ、抜本的な政策転換を呼びかけました。この要求は同党の政策綱領にも反映され、共和党からの「社会主義」「共産主義」との攻撃をはねのけ支持を広げました。米紙ニューヨーク・タイムズは「社会主義だとのレッテル貼りはもう効かない」と報じました。

 今年は、「99%のための政治を」をスローガンに全米に広がった「オキュパイ・ウォール街」運動から10年です。金融街の貪欲を批判し、資本主義の矛盾に正面から異議を唱えたこの運動は、サンダース氏ら進歩派の台頭の基盤を準備しました。10年を経た今、米社会は、若い層を中心に「社会主義」への新たな共感と政治参加が広がっています。

 さまざまな「社会主義」への共感も、現状へのトランプ支持者の激しい怒りも、背景にあるのは、止まらない格差と貧困の拡大、中間層没落など米国社会の矛盾と行き詰まりに対処できていない既成政治への怒りと不信です。

 バイデン新政権が直面しているのは、この現実です。当面、大幅な財政支出を伴う新型コロナ追加対策の実現が焦点となります。コロナ禍でもっとも打撃を受けた層への対策をはじめ、どのような経済回復策を打ち出すかは、政権がめざす社会像に直結します。この政権の力がさっそく試されます。

国際協調への復帰を表明

 バイデン氏は就任初日、気候変動対策のパリ協定や世界保健機関への復帰など国際協調を強化する方針を表明しました。緊急に求められる国際協調に背を向けてきた前政権の方針からの転換です。

 トランプ氏は同盟国への批判を口にしながらも、従来の政権ができなかったアフガニスタンからの撤退や北朝鮮との直接交渉に踏み切りました。長期の軍事関与を縮小し、大胆に外交に訴える点で米世論は歓迎しました。

 これとは対照的にバイデン氏は、「同盟を修復」し、「世界を指導する」と強調しています。同盟再強化でなにを目指すのか、この点では強い警戒が必要です。


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