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2021年1月21日(木)

主張

米軍機の低空飛行

暮らし脅かす無法を許すのか

 沖縄本島の那覇市の西方約40キロに位置し、国立公園にも指定されている慶良間(けらま)諸島(座間味村、渡嘉敷村)で、米軍機の低空飛行訓練が相次いで目撃され、大きな問題になっています。沖縄県議会の特別委員会が14日に全会一致で即時中止を求める抗議声明を可決し、県も20日、玉城デニー知事名で政府に強く抗議しました。米軍機の低空飛行訓練は、地域住民に恐怖を与え、墜落事故が起これば大惨事につながりかねません。国民の命と暮らしを脅かす米軍の無法を放置することは許されません。

これまで見たことない

 米軍機の低空飛行訓練が慶良間諸島で目撃されたのは、昨年12月28、29日と今年1月6日です。防衛省などによると、沖縄本島にある米空軍嘉手納基地(嘉手納町、沖縄市、北谷町)所属のMC130J特殊作戦機が2機から5機の編隊を組んで行ったものです。

 目撃者が撮影した動画では、展望台の軒先よりも低く飛んだり、山の間をすり抜けたりする危険な行為が確認できます。慶良間諸島では以前も低空飛行が目撃されていますが、今回はこれまで見たことがないような超低空での旋回を繰り返したと報じられています。

 日米両政府は1999年に低空飛行訓練に関する合意を公表し、「安全性を最大限確保」し、「地元住民に与える影響を最小限にする」としました。しかし、この約束は全くほごにされています。

 岸信夫防衛相は今回の低空飛行訓練を受け、「日米合意を順守するとともに、周辺住民に対する影響を最小限にとどめるように申し入れを行っている」(8日)と述べていますが、中止は求めていません。あまりに弱腰です。

 岸氏が中止を迫れないのは、米軍機の低空飛行訓練を容認しているからです。99年の日米合意は「戦闘即応体制を維持するために必要」とさえ述べています。

 岸氏も、慶良間諸島が米軍の訓練区域に含まれていないことを認めながら、「米軍による飛行訓練は、パイロットの技能の維持・向上を図る上で必要不可欠」「日米安保条約の目的達成のための重要な訓練だ」(同)と述べています。沖縄県内でこの岸氏の発言に批判の声が上がったのは当然です。

 今回のような異常な飛行が横行するのは、日米地位協定に基づく特例法で米軍には日本の航空法の適用が除外されているからです。

 航空法は、最低安全高度(人口密集地で300メートル、非人口密集地で150メートル)以下の飛行や編隊飛行などを禁止しています。運航上必要のない低空飛行や激しい音を発する飛行、急降下なども認めていません。ところが、米軍機は特例法でこれらの規制の対象外になっています。米軍機の低空飛行訓練に関する日米合意に実効性がないのもこのためです。

 ドイツやイタリアで米軍機の飛行に国内法を適用し、規制しているのとは極めて対照的です。

日本各地で急増の今こそ

 低空飛行訓練は昨年来、日本各地で急増していることが報告されています。新型コロナの感染防止のため、海外に出動する訓練を控え、日本国内で実施しているためという指摘もあります。

 米軍機の低空飛行訓練を直ちにやめさせ、航空法を適用できるようにする日米地位協定の抜本的な改定がいよいよ必要です。


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