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2021年1月17日(日)

主張

コロナで罰則導入

強権行使は感染抑止の妨げだ

 菅義偉政権が、新型コロナウイルス感染症対策で行政が出す勧告や命令に国民や事業者が従わない場合に罰則を科す方針を打ち出しました。18日召集の通常国会に感染症法・検疫法、新型インフルエンザ特別措置法の改定案を提出し規定を盛り込むことにしています。無為無策で感染拡大を招いたのは菅政権です。罰則を振りかざして国民に強要するやり方は言語道断です。強権行使は感染抑止の妨げにしかなりません。罰則導入は撤回すべきです。

分断を助長する法改定

 感染症法・検疫法の改定では、宿泊療養、自宅療養の要請に応じない陽性者に入院を勧告し、従わない人に懲役または罰金の刑事罰を科すといいます。しかし、今問題になっているのは、陽性判定を受けても入院できない人が相次いでいることです。宿泊療養施設も不足しています。自宅で死亡する人もいます。入院先や必要な施設の確保こそ政府の役目です。

 感染経路の調査に協力を拒否した場合にも刑事罰を科すとしています。いつどこで誰と会ったかはプライバシーにかかわります。個人情報の保護や差別の禁止など安心して調査に応じられる仕組みを政府が整えるべきです。罰則で脅しつければ、調査を行う保健所と対象者の信頼関係がなくなり、感染自体を隠す人が増えるのは目に見えています。刑事罰は役に立たないばかりか有害です。

 感染症法は国の責務として「感染症の患者等の人権を尊重しなければならない」と明記しています。ハンセン病やエイズの患者が差別を受けた歴史への反省からです。罰則導入は同法の趣旨に真っ向から反しています。日本医学会連合は緊急声明で「罰則を伴う強制は国民に恐怖や不安・差別を惹起(じゃっき)する」とし、国民の協力を著しく妨げる恐れを指摘しました。真剣に受け止めるべき警告です。

 同法の改定では、国や都道府県が医療機関にコロナ患者を受け入れる病床の確保を勧告し、応じない場合、機関名を公表できるようにします。事実上の制裁です。コロナ患者の受け入れは医療機関に多大な負担を強いています。それ以外の病院もコロナ以外の患者を受け入れて地域の医療を支えています。菅政権は、医療機関の減収補填(ほてん)をかたくなに拒む態度こそ改めなければなりません。

 特措法の改定では、緊急事態宣言のもとで営業時間の短縮要請などに応じない事業者に行政罰である過料を科します。緊急事態宣言の前段階として「予防的措置」を新設し、この段階から過料を可能にします。

政府の支援は「努力」だけ

 事業者に対する国の支援については努力規定を設けるだけです。中小・小規模業者は緊急事態宣言のもとで補償なしに時短を余儀なくされています。政府による直接支援は1回だけの持続化給付金と家賃支援給付金、今回は1日最大6万円の協力金にすぎません。要請に応じた業者は事業継続の危機にひんしています。補償を拒み、従わなければ罰則―これで積極的に協力できるわけがありません。

 今求められるのは国民の連帯です。罰則導入など政府がすることではありません。感染拡大の責任を国民に押し付けるのではなく、政府自身が本来の役割を果たさなければ感染は抑えられません。


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