しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年11月20日(金)

卵子・精子提供の親子関係特例法案

参考人の発言(要旨)

 第三者から卵子や精子の提供を受けた生殖補助医療で生まれた子どもの親子関係を規定する民法特例法案が19日、参院法務委員会で審議され、専門家から、子の「出自を知る権利」や生殖補助医療の規制など重要な課題が先送りされていることへの懸念の声が上げられました。参考人として出席した長沖暁子・慶応大講師、柘植(つげ)あづみ・明治学院大教授の発言(要旨)は次の通りです。


子どもの権利を守れ

長沖暁子・慶応大講師

写真

(写真)質問に答える長沖暁子氏=19日、参院法務委

 法案に「出自を知る権利」が入ってないことに失望しています。

 AID(非配偶者間人工授精)で生まれた方の話を聞いてきましたが、その方たちの絶望は想像を超えたものがありました。自分がAIDで生まれた事実を知るきっかけは、両親の離婚、または親の病気や死というつらい場面が多く、家族の危機と、もう一つの自分の危機という二重の葛藤を抱えることになります。

 そのために、親が自分に隠していたことに怒り、自分のアイデンティティーを喪失した、自分の半分が空白になってしまったと感じて、その後の人生を大きく狂わせてしまう人たちもいます。

 ある人は、なぜ精子提供者を知りたいかと言うと、自分が精子というモノから生まれてきたのではなくて、そこに人がいたということを確認したいと言っています。空白を埋めるには、人としての提供者を知ることしかないと思います。

 生殖補助医療とは、親とは別の1人の人間を誕生させる行為で、だからこそ、社会やおとなは、生まれてくる子どもが健やかに生きるための権利を守らなければいけないと思います。

 子どもの権利と親の権利をてんびんにかけるのではなく、生まれた子どもも親も幸せになるためのシステムや法をつくってもらいたいと思っています。

基本理念明記されず

柘植あづみ・明治学院大教授

写真

(写真)質問に答える柘植あづみ氏=19日、参院法務委

 法案の基本理念が「標語」のようにしか読み取れませんでした。生殖補助医療を誰に認めるか、どの生殖補助医療を使うことを認めるか、どんな制度を設けるのかなどは、国が家族や親になる人をどのように規定するか、生命をどのように考えているかにつながると思います。法案を読んでも、基本理念を映し出すはずの「行為規制」が書かれていないことが問題だと思いました。

 法案で足りないことを2点指摘します。一つが統計の整備です。子どもを願う人たちに生殖補助医療を安全で効果的に実施するには、情報の収集と分析が必要です。現在、日本産科婦人科学会が行っていますが、法律を設けるならば、国が責任をもって、成功率や医療を受けた人、生まれた子の長期的な健康も含めて調査しなければいけません。

 もう一つが、この治療を受ける人たちが、十分な情報を得て、自分で決めるという制度を設けることです。生殖補助医療の技術の質の向上だけではなくて、心理的なサポートや意思決定のサポートが必要です。

 情報を得て、自分でよく考える、性と生殖について自分の体や心について理解して、意思決定をしていく、それがリプロダクティブ・ヘルス・ライツについて学ぶ機会にもなると思います。


pageup