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2020年11月13日(金)

主張

女川再稼働「同意」

安全と住民置き去り許されぬ

 宮城県の村井嘉浩知事が、東北電力女川(おながわ)原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働に同意を表明しました。2011年3月11日の東日本大震災で被災した原発の再稼働について地元自治体が同意したのは、初めてです。同原発では、原発自体の危険性とともに避難計画の実効性が大きな問題になっています。県民の不安は解消されておらず、周辺の自治体の中からも再稼働の中止を求める意見が出されています。これらの声に向き合わず、再稼働を推し進める菅義偉政権や知事の姿勢は重大です。

被災地の原発では初めて

 女川原発2号機は、大震災で大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉(BWR)です。BWR再稼働への「地元同意」も今回が初めてで、東北電力は22年度以降の運転を目指すとしています。

 女川原発は、東日本大震災の震源に最も近い原発です。震災時は、想定を大きく超える揺れによって、1~3号機すべてが緊急停止しました。約13メートルの津波にも襲われ、2号機の原子炉建屋の地下は浸水しました。外部電源は5系統のうち4系統が失われるなど重大事故直前の状況になりました。

 今年2月、原子力規制委員会は、津波の想定を引き上げた高い防潮堤をつくる対策などを講じたとして、2号機を新規制基準に適合するとしました。しかし、東日本大震災で、タービンの損傷や原子炉建屋に多くのひび割れが発生したこともあり、建屋の強度など安全への疑念は消えません。

 新規制基準への「合格」は、重大事故の際の住民の安全を保証するものではありません。事故の進展によっては放射性物質を放出することもあるという基準だからです。宮城県沖で今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が起きる確率は90%程度という政府の地震調査研究推進本部の想定も深刻に受け止めるべきです。

 事故を想定して県や石巻市が策定した避難計画に対する住民の不安は解消されていません。女川原発があるのは、牡鹿(おしか)半島の付け根近くです。主要道路は海岸沿いに曲がりくねっているなど、多数の住民が迅速に避難するのは極めて困難視されています。昨年の台風19号では道路が冠水し、長時間通行できなくなって住民が孤立する事態も発生しました。

 同原発の半径30キロ圏内には約20万人が暮らしていますが、県の試算でも圏内の住民が一斉に避難した場合、石巻市の人の多くが避難の目的地に到着するには5日以上を要することが明らかになっています。住民の安全が守られない避難計画のまま、再稼働を推進することは、あまりに危険です。

福島事故を忘れたのか

 地元紙の世論調査では再稼働不支持が7割以上です。再稼働の是非を問う住民投票条例を求める署名には11万人以上がサインしました。9日に開かれた県内の市町村長会議では、30キロ圏内の自治体首長が、県民の声を踏まえた判断を求めました。この声を真剣に受け止めるべきです。

 ひとたび事故を起こせば、長期にわたり広範囲に甚大な被害をおよぼす原発の危険性は福島原発事故で明白です。事故に反省もなく安全と住民の懸念を置き去りにした原発再稼働の加速を狙う菅政権を許すわけにはいきません。


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