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2020年9月29日(火)

きょうの潮流

 うねる渦巻き、光る目のようなひし形、植物のトゲや新芽を表す曲線と鋭角、魚のうろこ状の精緻な連なり。衣服や帯、木工芸に施されたアイヌ文様は、大自然と共に生きる日常の中から生み出されたことがわかります▼東京・駒場の日本民芸館で開催中の「アイヌの美しき手仕事」展に出かけました。同館の創設者で思想家・美学者の柳宗悦(やなぎ・むねよし=1889~1961年)は、開館5年目の1941年にすでに「アイヌ工芸文化展」を開いています▼「なぜアイヌにあんなにも美しく物を作る力があるのであろうか。今も本能がそこなわれずに、美を創り出す働きがあるのであろうか。なぜ彼等(かれら)の作るものに誤謬(ごびゅう)が少ないのであろうか。どうして不誠実なものがないのであろうか」(「アイヌへの見方」)▼柳は「アイヌ人に送る書」でも、民族固有の文化を認めることの大切さを述べ、その文化の持つ美への感動が互いの尊敬と理解を深めるとして、国家による民族差別と同化政策を批判しました▼それから約80年。2019年、アイヌ民族を「先住民族」と明記したアイヌ施策推進法が成立し、さらに今、先祖代々暮らしてきた土地での狩猟や漁労、採取など資源に対する権利、伝統文化を維持し発展させる権利、自己決定権や自治権等を含む「先住権」を求める機運が高まっています▼展示の映像で知った竹製の口琴・ムックリの音色が忘れられません。木々のさざめき、川の流れ、風の音、キツネの鳴き声、遠い熊の咆哮(ほうこう)まで聞こえてくるようでした。


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