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2020年9月25日(金)

主張

銀行口座不正出金

推進一辺倒の電子決済の危険

 ドコモ口座などの電子決済サービスを通じて銀行預金が不正に引き出される事件が拡大しています。実行した人物はもちろん摘発されなければなりません。悪用を許した電子決済サービス事業者と銀行の責任も免れません。安倍晋三前政権は電子決済を活用した「キャッシュレス」の旗を振ってきました。推進一辺倒で、個人情報の保護など安全対策がおろそかになっていたのではないか。徹底した検証が求められます。

キャッシュレスを急加速

 被害が最も大きいのは携帯電話通信最大手のNTTドコモが提供するドコモ口座です。ソフトバンクのPayPay(ペイペイ)など他の電子決済サービスでも悪用がわかり、10以上の銀行で不正な出金が判明しました。

 何者かが口座番号など預金者の個人情報を入手し、本人になりすまして電子決済サービスの利用者となり、銀行口座からお金を引き出す手口でした。電子決済サービスを利用しない人も被害に遭っています。ドコモ口座はメールアドレスを入力するだけで誰でも開設でき、本人確認の要件が緩かったため特に狙われたとみられます。NTTドコモは、セキュリティーが不十分だったことを認めました。昨年、不正出金が判明したのに対策を怠り、被害の拡大を許したことも批判されています。

 銀行別ではゆうちょ銀行からの不正引き出しが最も多く、24日の発表時点で約380件、計約6000万円に上ります。利用にあたって本人確認の仕組みが緩かったことが原因とみられます。事業者と銀行が原因を究明し、被害者に全額補償するのは当然です。

 キャッシュレス化を加速する政府の姿勢も問われます。電子決済の悪用は今回が初めてではありません。昨年にはセブン&アイ・ホールディングスのセブンペイが不正利用で終了に追い込まれました。政府は日本のキャッシュレス化が諸外国に比べて遅れているとして急拡大を図りますが、前のめりになる中で不正利用が繰り返されています。安全性がおざなりにされているのではないでしょうか。

 安倍前政権はキャッシュレス化を成長戦略の重点とし数値目標まで決めて促進してきました。政府の2017年「未来投資戦略」は27年までの10年間でキャッシュレス決済比率を倍増し、全体の4割程度とする目標を掲げました。18年には目標達成を「25年まで」に前倒ししました。政府は、銀行や送金サービスなどの業態別に分かれている現行の金融法制が、非金融機関を含めた新しい事業者が参入する障害になっているとして規制緩和を図ろうとしています。

個人情報保護を最優先に

 菅義偉政権はデジタル化を目玉政策に掲げ、マイナンバーカードの普及をカギとしています。マイナンバーと銀行口座のひも付けも検討されています。

 マイナンバーは多くの個人情報と結びつきます。銀行や電子決済サービス事業者が顧客のお金を守るという最低限の安全対策すらできていないもとでは不安が募るばかりです。

 デジタル技術の活用にあたっては個人情報の保護などの安全性対策を事業者まかせにせず、政府が指導、監督すべきです。推進ありきでキャッシュレス化を進めることは国民の利益になりません。


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