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2020年9月23日(水)

コロナ解雇・失業急増

毎月1万人 若者「家賃も払えない」

東京の求職者の声

 新型コロナウイルス感染拡大による雇用危機が深刻です。コロナ関連で解雇や雇い止めをされた人は約5万5000人に。毎月約1万人増え続けています。ハローワークに職を求めにきた人に話を聞くと―。(芦川章子、小梶花恵)


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(写真)求人検索用のパソコンが並ぶハローワーク=東京都内

 9月中旬、東京都のハローワーク渋谷前。繁華街の一角にあるビルからは仕事の相談に訪れた人たちが次々と出てきます。その半数が若者です。

 美容院のアシスタントだった男性(24)=目黒区=は「コロナでうちも厳しいから」と、働いていた美容院を6月に解雇されました。「これからどうしよう」と途方にくれる日々が続いています。

 3~4年勤め、そろそろ美容師としてデビューできるかなと期待していただけに「納得がいかない」。この日も雇ってくれる美容院は見つかりませんでした。

 アルバイト先も少ないため、知り合いの店で雇ってもらい、失業給付と合わせて生活費を稼ぎながらハローワークに通っています。「またアシスタントのやり直しはいやです。これまでの経験を考慮してもらえるところで働きたい」

失業給付もなし

 エンターテインメントの技術職という30代の女性=渋谷区=は、この日初めてハローワークを訪れました。

 技術職としての経験は10年以上。20万~40万円あった月収は4月以降、0~10万円以下に激減しました。フリーランスのため失業給付もありません。地方から上京して1人暮らしです。持続化給付金の100万円は底をつき、家賃を払うこともできません。

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に起因する解雇や雇い止め者数は、9月11日時点で見込みを含め5万4817人(前週から2309人増)と発表。統計を取り始めた2月は282人でした。

実際の数さらに

 産業別では、製造業9027人、宿泊業7795人、飲食業7536人、小売業7083人と続きます。人数は労働局などで把握したものに限られており、実際の解雇者はさらに多くなります。

 さらに、200万人超いるといわれるフリーランスを本業とする人たちは調査の対象に含まれていません。コロナの影響で仕事を失った人はこの数を大きく上回るとみられます。

失業給付窓口 連日 人であふれる

 東京都のハローワーク渋谷前。渋谷区の30代の女性は「ハローワークは敷居が高くて来られませんでした。でも、もう先が見えなくて」と切羽詰まった表情です。

 女性は派遣会社にも登録しています。数年前には選べた仕事先も、今は経験がない職種は紹介すらしてもらえません。「まったく違う仕事でもいい。ただ雇用保険のあるような安定した仕事に就きたい」と希望はささやかです。

 取材に対し「今日も暑いから気を付けてくださいね」と話し、終始笑顔で応える女性。時折、言葉に詰まり、顔をそむけ空を見上げます。向き合った目にはうっすら涙が浮かんでいました。

 ベトナム語通訳のベトナム人男性(28)=杉並区=は収入が半減したため、新たな仕事を探しています。

 外国人技能実習生を受け入れる監理団体で働き、ベトナム人実習生の通訳をしていましたが、実習先の仕事が減ったため通訳の仕事も減りました。ハローワークで5件の紹介がありましたが面接は決まっていません。

 定額給付金の10万円をもらいましたが、家賃や生活費には足りず、貯蓄を崩し節約して過ごしています。「私は何とかなりますが、実習生は本当に困っています。日本に来るための借金が残っている。実習生を助けてほしい」

 ハローワーク渋谷の職員は、コロナ解雇について「確かに増えています。若い方からの相談も多い」といいます。なかでも失業給付の窓口は「連日、人であふれており、まったく減らない」状況だと話します。

法と制度使い命守ろう

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(写真)梅田和尊弁護士

 日本労働弁護団事務局長・弁護士の梅田和尊さんの話 今回のコロナ雇用危機では、非正規労働者やフリーランスといった立場の弱い人たちから直ちに影響が表れました。

 政府はこの間「多様な働き方」「働き方を選べる社会」として、フリーランスなどの労働契約ではない働き方を推進してきました。適正な契約条件に関するルールや社会保障など、個人で働く方を守るための法律を未整備のまま推進してきたことが大きな社会不安を生み出しています。

 歴代の自民党政権は労働規制緩和を進め、非正規労働者は全体の4割にまで増えました。菅義偉政権は「安倍政権の継承」「規制改革」を掲げており、働く人の権利保護にかじを切るとは思えません。

 一方、労働組合や私たちの運動で正規・非正規の格差解消につながる法律も少なからずできました。しかし、まだまだ足りない。この動きを前進させることが重要です。

 そして仕事で、職場で、少しでも「おかしい」と感じたら、すぐに弁護士や労働組合などの専門家に相談してほしい。不当解雇や違法行為の可能性もあります。今ある法律や制度を徹底的に活用し、生活と命を防衛してください。

 日本労働弁護団ホットライン(相談料無料)月・火・木(午後3時~6時)、土(午後1時~4時)☎03(3251)5363


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