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2020年9月13日(日)

主張

「敵基地攻撃」談話

辞任前に憲法破壊を促す異常

 安倍晋三首相が「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」について談話を発表しました。敵国のミサイルが発射される前にその基地などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有に関し年末までに結論を出すよう促すものです。敵基地攻撃は事実上の先制攻撃であり、憲法をじゅうりんするばかりか、国際法違反です。退陣する首相が安全保障政策の大転換につながる方針策定を次期政権に求めるというのは極めて異常です。

「戦争する国」への暴走

 談話は、北朝鮮の弾道ミサイルや核兵器の保有・開発状況に触れ、「(ミサイル)迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか」「抑止力を高め、…攻撃の可能性を一層低下させていくことが必要ではないか」と述べ、事実上、敵基地攻撃能力の保有を主張しています。その上で「今年末までに、あるべき方策を示し、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していく」と表明しています。

 首相は談話発表後の記者会見で、次の内閣を「縛ることにはならない」としつつ、「シームレスに(途切れなく)議論していくのは当然のことであり、最大の責任だ」と述べました。敵基地攻撃能力の保有に向け、後継首相の「責任」を迫るものです。

 すでに辞意を表明し、行政の継続に必要な事務処理にとどまるべき首相が、憲法破壊の道筋をつけることは許されません。

 談話で見過ごせないのは、安倍政権の7年8カ月で「わが国の安全保障政策に大きな進展があった」とし、「平和安全法制を成立させ、日米同盟はより強固なものとなった」と述べていることです。「平和安全法制」とは、安倍政権が2015年9月に成立を強行した安保法制=戦争法のことです。同法は、米国に対する武力攻撃を日本が阻止する集団的自衛権の行使や、「戦闘地域」での自衛隊による米軍への兵站(へいたん)などを可能にしました。いずれも歴代政府が「違憲」としてきたもので、米国とともに日本が「戦争する国」になることに道を開きました。

 談話は、敵基地攻撃能力の保有検討に関し「助け合うことのできる同盟はその絆を強くする」と述べています。日本が敵基地攻撃能力を保有することになれば独自に他国を攻撃できるようになり、米国の戦争体制、さらには核戦略に一層深く組み込まれるのは明らかです。

 談話は、敵基地攻撃能力保有の必要性について「抑止力を強化する」と強調しています。

 しかし、談話が指摘するように「北朝鮮はわが国を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有」し、「核兵器の小型化・弾頭化も実現」しているとされます。さらに北朝鮮が保有するミサイル発射台付き車両は最大200両とされます。

軍事的緊張著しく高める

 移動するミサイル発射台の正確な位置を把握するのは困難な上、その一部を破壊できても、残りのミサイルが発射されれば甚大な被害は免れません。そのすべてを破壊できるような攻撃力を追求することになれば、際限のない軍拡につながり、北東アジアの軍事緊張を著しく高めることは必至です。

 今、何よりも大事なことは、ミサイルを撃たせない外交交渉や平和構築への努力です。


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