2020年9月9日(水)
主張
「安倍退陣」と改憲
9条破壊策動に終止符打とう
安倍晋三首相が改憲の野望を果たせないまま退陣します。首相は先月28日の辞意表明の記者会見で、「志半ばで職を去ることは断腸の思い」と、改憲が実現できなかったことへの悔しさを隠しませんでした。同時に、「新たな強力な体制の下、実現に向けて進んでいくものと確信する」と述べ、改憲路線が引き継がれることに強い期待をにじませました。首相が固執する9条改憲の狙いは、日本を「戦争する国」につくり変えることです。安倍首相の退陣とともに、改憲策動そのものに終止符を打つことが重要です。
国民は望んでいない
首相が執念を燃やしてきた改憲が7年8カ月余りの在任中にできなかったのは、何よりも主権者である国民が改憲を求めていないからです。時事通信が6月末配信した「憲法に関する世論調査」では、憲法9条を「改正しない方がよい」が69・0%を占めました。他のメディアの世論調査でも「安倍改憲反対」が多くの声です。
国民が望んでもいないのに改憲の旗を振り続け、国会での改憲論議をせき立ててきた首相の態度は、憲法99条が定めた首相らの憲法尊重擁護義務に反するとともに、「三権分立」の原則も踏みにじる、言語道断なものです。
自民党内きっての改憲派の安倍首相は、2012年の政権復帰以来、秘密保護法や安保法制=戦争法の強行など、立憲主義破壊を繰り返してきました。
17年5月には、9条に自衛隊を書き込むなどの明文改憲にまで踏み込みました。首相が言い出した改憲案は、その後自民党内で「条文イメージ(たたき台素案)」としてまとめられます。9条に自衛隊を明記し、同条2項の戦力不保持・交戦権否認の規定を空文化させ、自衛隊が大手を振って海外での無制限の武力行使を行うことを可能にする危険な思惑です。
しかし、首相が企てた国会での自民党改憲案の提示は、5国会連続でできませんでした。昨年の参院選では改憲勢力が改憲案の国会発議に必要な3分の2の議席を割り込みました。首相が描いた20年から改定憲法を施行するという目標は完全に破たんしています。安倍首相は06年からの第1次政権でも改憲に突き進もうとしましたが、国民世論の力で許しませんでした。繰り返される「安倍改憲」に全く道理はありません。
安倍首相の後継に名乗りを上げた自民党総裁候補も、改憲を目指す立場です。菅義偉官房長官は現行憲法が制定されて70年以上たっており「改正は必要」と明言し、「議論を進めていく環境を整備していきたい」と主張します(「産経」6日付)。
岸田文雄自民党政調会長も憲法改正を目指すことを公約し、石破茂元地方創生相も9条改憲をかかげています。国民の声に反する点では共通しています。
憲法を守り生かすこと
憲法は本来、主権者である国民が国家権力を縛るものです。「改憲ありき」で、国民に改憲を押し付けるのは断じて許されません。
憲法にもとづき立憲主義、民主主義、平和主義を回復するため、「安倍改憲」ときっぱり決別するときです。安倍首相による9条改憲を阻んできた市民と野党の共闘をさらに発展させ、憲法を守り、生かしましょう。