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2020年9月7日(月)

主張

広がる反人種差別

植民地主義の反省が迫られる

 米国で相次ぐ白人警察官による黒人への暴力に対し、人種差別に反対するたたかいが世界に広がっています。運動は、今もなくならない差別の根絶を求めるとともに、過去にさかのぼって、差別の歴史的元凶である植民地主義に反省を迫っています。

「ダーバン宣言」の重要性

 5月の米ミネソタ州での白人警官による黒人暴行死に続き、8月にはウィスコンシン州で白人警官が黒人男性を背後から銃撃し、怒りが広がっています。テニスの大坂なおみ選手が一時、試合の棄権を表明して強い抗議の意思を示したほか、テニス、バスケットボール、野球などプロスポーツが試合を中断、延期して人種差別を糾弾しました。人種差別への態度は11月の米大統領選挙の重要争点になっています。

 人種差別反対運動は、奴隷制度や植民地主義を容認してきた歴史を直視し見直す動きに進んでいます。16世紀ごろから欧州の奴隷商人や貿易会社がアフリカの住民を暴力的に連れ出し、「物」として売買されたのが米大陸の黒人奴隷です。南北戦争で奴隷制存続を主張した南部連合軍司令官の像が米各地で撤去されつつあります。英ロイズ保険組合は奴隷貿易を保険で支えたことを謝罪しました。

 英国のオックスフォード大学は19世紀の植民地政治家セシル・ローズ像の撤去を決めました。像は、同大学に多額の遺産を寄付して奨学金をつくったローズをたたえたものです。ローズは南アフリカでダイヤモンド採掘によって巨万の富を築き植民地政府の首相になりました。大学を撤去に動かしたのは米国の黒人に対する暴力への抗議と、学生によるオンライン署名など数年前から続く、ローズの植民地主義、人種主義を問い直す運動でした。

 米国での5月の黒人暴行死事件を受けて国連人権理事会が採択した決議は相次ぐ黒人への暴力を非難するとともに「ダーバン宣言」の重要性を指摘し、人種に関係なく、すべての人に人権が保障されなければならないと述べました。

 宣言は2001年に南アフリカのダーバンで国連が開いた「人種主義、人種差別、排外主義および関連する不寛容に反対する世界会議」で採択されました。奴隷制度を「人道に対する罪」と糾弾し、植民地主義が人種主義、人種差別をもたらしたと明記しました。そして「植民地主義はいつ、どこで起ころうと非難され、再発を防止しなければならない」として、過去のことではなく、今に続く問題だと提起しました。

 第2次世界大戦後、植民地体制が崩壊し、100を超す主権国家が誕生したことは20世紀最大の世界の構造変化です。かつて植民地を支配した国々で植民地主義への批判が広がっていることは、世界の構造変化が各国国民の間に生きた力となって発展していることを示しています。

日本の過去も問われる

 過去の植民地支配については日本も責任を問われています。明治維新以降、日本は台湾、朝鮮半島、中国東北部へと植民地を拡大し、アジア・太平洋戦争を引き起こしました。日本政府はいまだに植民地支配の誤りを認めていません。世界の流れを踏まえて侵略の歴史を検証し、真剣な反省に踏み出すことが求められます。


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