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2020年9月4日(金)

大阪市なくす=「都」構想 住民投票強行へ

コロナ対策に逆行

 大阪維新の会(代表・松井一郎大阪市長)は府・大阪市議会での議決を経て、大阪市を廃止し四つの特別区に分割する「大阪都」構想の是非を問う住民投票を11月1日に実施する構えです。新首相の下での解散・総選挙の投開票日が近くなれば、同日投票にしたい考えです。コロナ禍の中での住民投票強行は何をもたらすのでしょうか。(渡辺健)


写真

(写真)「なくさんといて大阪市」と訴える人たち=8月18日、大阪市北区

対コロナ禍

「バーチャル都」で進んだ?

独自策ほぼ放棄した市

 吉村洋文大阪府知事は近著『大阪都構想2・0』に収録された対談の「コロナ対策は『バーチャル大阪都』だからできた」の項で「大阪府・市の司令塔を一本化する『バーチャル大阪都』体制でなければ、大阪モデルのランプを灯(とも)すことはできませんでした」と述べています。松井大阪市長も議会答弁で「バーチャル都構想」によって大阪のコロナ対策がうまくいっているかのように強調。いまは、知事と市長の人間関係だが、府市一体を制度化するのが「大阪都」だと繰り返しました。

 果たしてそうでしょうか。「大阪都」構想とは大阪市をなくし権限も財源も「都(府)」に吸い上げ「1人の指揮官(知事)」の下で好き放題ができる体制をつくろうというものです。「バーチャル都構想」で何が起きたか。コロナ対策で「司令塔」を府に一本化した下で、大阪市は独自施策の実施をほぼ放棄。1000億円もの財政調整基金があるのに、全国各地で実施された、コロナの患者を受け入れた病院への支援や中小企業への無利子、信用保証料ゼロなどの独自策をしていません。10万円の特別給付金の支給も全国で最も遅れました。

 一方、府は独自基準の「大阪モデル」で非常事態を示す「赤信号」が点滅しないように基準を変更。吉村知事の「うがい薬」の奨励など科学的根拠のない言動が医療現場を混乱させました。肝心のPCR検査は府内で1日平均2100件(8月1日~22日)にとどまり、検査能力数では東京都の4分の1、神奈川県の半分となっています。

 重症病床使用率が5割を超える深刻な事態が生じており、コロナ対策に全力を挙げるべき時です。しかも、大阪市が感染震源地化し、近隣市の感染増につながっている可能性があるのに、大阪市つぶしのために人やお金を注ぎ込むのは障害にしかなりません。

住民サービス

特色ある市のサービスを維持?

財源奪われ後退は必至

 維新は、否決された2015年の制度案から「バージョンアップ」したとしています。その一つが「特色ある大阪市の住民サービスの維持」です。しかし、これには何の保証もないどころか、後退が必至です。制度案でも「維持」は努力義務にしかなっていません。財政的な裏付けがないからです。

 設置される特別区は財源の多くを「府」に奪われ、「府」頼みになります。今後増える社会保障を自前で推進することが困難になります。「18歳までの医療費助成」「高齢者への敬老パス」などの住民サービスは後退が懸念されます。介護保険などは「一部事務組合」の仕事となり、“保険料を引き下げてほしい”といった区民の声が直接届かなくなってしまいます。

 初期費用を抑えるとして特別区の新庁舎を建設せず、現在中之島にある市役所を「合同庁舎」とするため、区にいない職員が多くなり、災害の時などにどうするのか心配の声が出ています。まるで自治体の体をなしません。

コロナ後

「二重行政解消」で発展?

二重三重の策こそ必要

 維新は、府・市の「二重行政」の解消によって「ポストコロナの大阪」も発展するかのように宣伝しています。

 しかし、「二重行政」解消の名で行われてきたことが今、問われています。

 「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこはお手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」

 前維新代表の橋下徹氏のツイッターが「何を今更」と物議を醸しました。

 住吉市民病院の廃止、医療・公衆衛生分野の切り捨て、「何でも民営化」で「公」の役割を投げ捨ててきたことなどの見直しが迫られています。必要な施策は二重三重に手厚く行うことこそが求められています。

 維新が「成長戦略」の目玉としてきたカジノを中核とする統合型リゾート(IR)の大阪誘致も、新型コロナによる経営悪化で大手カジノ資本の日本進出撤退や汚職事件などで破綻しています。

 新型コロナは、これまでの大阪の政治・経済・社会のあり方の根本的な転換を求めています。日本共産党大阪府委員会は、大阪市廃止ではなく、大阪市の力を生かした新しい大阪への道を呼びかけています。


再び「NO」の審判へ総力あげる

共産党大阪府委員会 柳委員長がコメント

 日本共産党大阪府委員会の柳利昭委員長は3日、次のコメントを発表しました。

 本日(9月3日)、大阪市会本会議で「大阪市廃止=都構想」のための「協定書」を維新・公明による多数で可決し、この秋に、2度目の大阪市民・住民投票を強行しようとしています。

 新型コロナ禍に誰もが不安と危惧を抱くなか、「なんで、こんな時に」との声があがっています。大阪で遅れているPCR検査の抜本的拡大をはじめ命と健康を守る医療・介護の体制という点でも、暮らし、とくに中小企業の経営と労働者の雇用を守る点でも、新型コロナ対策に総力をあげることが最優先課題です。新型コロナ対策を万全にすすめるうえでも、強力な大阪市の権限、財源を解体する道に踏み出すことは逆行以外の何ものでもありません。

 また「協定書」にしめされた「特別区の制度設計案」が、住民サービス低下をもたらす点でも、「中之島合同庁舎」などというおよそ自治体の体をなさない姿になる点でも、ばく大なコスト増と財政危機をもたらす点でも、破たんがあらわになっています。

 新型コロナの教訓を生かし、いま大阪で求められるのは、これまでの政治・経済・社会のあり方を転換し、命と健康、くらし第一の大阪市政をきずくことです。

 日本共産党は5日、大阪府委員会総会を開き、府民向けのアピールを発表します。住民投票において、「大阪市廃止=都構想」に再び「NO」の審判を下すために、「明るい民主大阪府政をつくる会」「大阪市をよくする会」をはじめ、広範な諸団体、市民のみなさんと手をたずさえ、総力をあげます。


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