2020年8月28日(金)
きょうの潮流
アメリカの黒人、ジョージ・フロイド氏が警察官の暴行で亡くなって3カ月余。23日には、警察官が丸腰の黒人を背後から銃撃する事件も▼「20世紀の問題は、皮膚の色による境界線(カラー・ライン)の問題である」。20世紀初頭にこう予言したのは、黒人社会の先駆的研究者、デュボイス博士です。奴隷解放宣言から40年後の1903年、黒人論の古典といわれる『黒人のたましい』(岩波文庫)で書きました▼奴隷解放後の社会を初めて実証的に研究しました。黒人がいつまでも耐えていることはできない。身体の自由、労働し思索する自由が必要だと説きました。「カラー・ラインを超える知性と共感の同盟によってのみ、正義と公正は勝利を得る」との呼びかけも▼黒人解放運動の先達でもあるデュボイスを敬愛していたのが、公民権運動の指導者・キング牧師です。57年前のきょう28日、黒人の公民権を求めたワシントン大行進に、20万人以上が参加しました。「私には夢がある」と繰り返す演説で、平等な社会の実現をよびかけました▼「あなたはいつになったら満足するのか」と聞く人に演説でこう答えました。「黒人が警察の言語に絶する残虐行為の恐ろしい犠牲者である限りは、決して満足することはできない」▼翌64年に公民権法が成立したあとも、人種差別が続いています。カラー・ラインの課題は21世紀に持ち越されましたが、「黒人の命は大事だ」と立ち上がる白人や若者が増え、これまでにない連帯が広がっています。








