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2020年8月13日(木)

米奴隷制被害者に自治体補償の動き

「国も必要」専門家強調

 米国で白人警官による黒人男性殺害を機に人種差別撤廃を求める声が強まる中、奴隷制被害者の子孫である黒人住民への補償を決めたり、検討を始めたりする自治体が生まれています。専門家は、いま見られる人種間の経済格差の根源が奴隷制や隔離・差別政策にあると指摘し、国として補償する必要性についても強調しています。

 米南部ノースカロライナ州バンコム郡の議会は4日、奴隷制や黒人の隔離政策に関与したことを謝罪し、郡内の黒人住民に補償を行うことを賛成多数で決めました。黒人住民の家屋所有率を高めたり起業を応援したりするなど経済的支援を強めます。

 バンコム郡の郡庁所在地であるアシュビル市の市議会も7月半ばに黒人住民への補償を決議。北部ロードアイランド州プロビデンス市は7月半ば、奴隷制への関与を検証し、補償方法を考える方針を発表しました。西部カリフォルニア州の下院は6月、黒人住民への補償方法を検討する専門委員会をつくる法案を可決しました。

 バンコム郡政府のニューマン議長(民主党)は、補償が必要な理由について「奴隷制、人種に基づく隔離、差別が国の法的枠組みの柱となってきた」「その影響がいまも存在するからだ」と述べました。

 米政府機関の研究(2018年)によると、白人1世帯の富は現在、黒人11・5世帯分に相当するほど格差が生まれています。米シンクタンク「ブルッキングス研究所」は、白人世帯の相続規模が黒人世帯より大きいことが人種間で経済格差を広げてきた要因だと指摘。奴隷制と制度化された隔離・差別政策で歴史的に「富を築こうとする黒人の努力がさまざまな形で妨げられた」「黒人社会は成長の機会を得る前に富を収奪されてしまった」と指摘しています。

 白人住民のなかには奴隷制は過去の出来事だとして、補償に反対する人もいます。

 ノースカロライナ州にあるデューク大学のウィリアム・ダリティ教授は同大のウェブサイトで「黒人の自立を妨げているのは、社会に全面的に参加するうえでの資産が欠如していることだ。これこそただしていくべきことだ」と指摘。奴隷制や隔離・差別政策は「個人の罪というよりも国家としての責任の問題だ」と語り、連邦政府としてこの問題に取り組むことを求めています。(島田峰隆)


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