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2020年8月11日(火)

減収通所介護事業所に補助 長野県飯田市

利用者負担なし 民医連の運動実る

 政府・厚生労働省が新型コロナウイルス感染症拡大による減収対策として、介護保険のデイサービスやショートステイ事業者に介護報酬の上乗せを認める「特例措置」を通知、算定すると利用者に筋違いの負担増が強いられるため撤回を求める声が上がっています。この問題で長野県飯田市はこのほど、利用者の負担増なく介護事業者を支援するため、「特例措置」を算定しない事業者に、介護報酬の上乗せ額に相当する補助金を交付すると決めました。(内藤真己子)


 市内の通所系サービスとショートステイサービス計87事業所に、総額8100万円を補助するもの。国の「特例措置」を算定していない事業所の、7月から来年3月分のサービス提供分が対象です。財源は、同市に約12億円交付される国の新型コロナ対策の地方創生臨時交付金をあてます。

 厚労省の「特例措置」は、事業者が利用者から「事前の同意」を得ることを条件に、例えば通所系サービスでは、提供サービス時間より2段階高い介護報酬を月4回まで算定できます。介護報酬の上乗せは、所得による1~3割の利用料負担の増額につながります。

 この「特例措置」に対し、地域で介護事業を運営する長野県民主医療機関連合会飯伊(はんい)連絡会(牛山雅夫運営委員長)は、「事業所の減収補てんは欠かせないが、利用者に負担増を押し付けることはできない」と協議。7月2日、同市に利用者負担が生じない独自の措置を求め要請行動を行いました。日本共産党市議団(後藤荘一団長)も市に要望していました。

特例で不公平も

 同市は、補助金の概要説明資料のなかで、国の「特例措置」の「課題」として、「サービス事業者から利用者に対して通常とは異なる介護報酬を請求する明確な根拠を示すことができない」「利用者の同意が前提であるため、同意を得られた利用者と得られない利用者とで不公平が生じる場合がある」と指摘しています。

 同市健康福祉部長寿支援課の筒井雄二課長は本紙に「『特例措置』を積極的に算定できない事業者もあると聞き、交付金を出す必要があると考えました。市民からも『受けていないサービスの利用料を払うのは納得できない』と苦情が寄せられていた」と話しています。

 同連絡会は先月上旬、飯田市に続き近隣の高森町、阿智村、下條村、喬木村、豊丘村にも要請。町村の担当者から「根本的に道理のない制度で利用者に理解してもらえない。コロナ対応を利用者に押し付けている」「矛盾ある制度」などの声が聞かれたといいます。

本来国が補償を

 同連絡会の織野孝司事務局長は、「コロナ禍で介護事業者は赤字に苦しんでいるが、利用者に筋違いの負担を押し付けるのは許されないと運動してきました。飯田市の補助金交付は画期的で、地域の他の自治体にも広げていきたい。根本的には国が公費によって介護事業者や医療機関の減収を補償することが欠かせません」と語っています。


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