しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年8月8日(土)

きょうの潮流

 「息子と会えなくなっちゃったよ」。知人男性(67)がさみしそうに話していたのは2月。あれから半年近くたちましたが、いまだに再会できていません。息子さん(32)には知的障害と強度行動障害などがあります▼昨年12月から入所施設で新たな暮らしを始めたところでした。入所後初めての週末。「私の顔を見てすぐに、息子は外出の準備をしたんだよ。私のこと覚えていたよ」と顔をほころばせていました。新型コロナが流行するまでは、自宅で家族と過ごそうと毎週末、迎えに行っていました▼車で出かけたときのこと。わざわざ遠回りして施設の横を通ったら、仲間と散歩してニコニコしている息子に“遭遇”しました。「やっと、一瞬だけ見えた」。横にいた妻は、カバンの中の携帯を探していて見逃してしまったとか▼男性が自宅で机に向かっていたら、背後に気配が。振り向くと、息子が立っていた。1人で帰れないはずなのに。どうやって来たんだろう。混乱していたら目が覚めた。なんだ、夢か…▼大切な家族と会いたくても会えない現実。厚生労働省は通達で、オンライン面会が望ましいとしています。触れることはできなくても、画面越しにお互いを確認しあえたら、どんなに良いか▼一方、久しぶりに画面を通して家族が声をかけたら、息子はパニックを起こすのではと心配します。コロナで一変させられた私たちのくらし。親元を離れた息子さんはいま、施設の仲間や職員と、新しい“家族”をはぐくんでいることでしょう。


pageup