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2020年7月29日(水)

「あずみの里」准看護師に逆転無罪

東京高裁 「刑法上の注意義務違反ない」

 長野県安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で2013年、入所者の女性=当時(85)=のおやつにドーナツを与え、窒息で死亡させたとして業務上過失致死罪に問われた准看護師の控訴審判決が28日、東京高裁でありました。大熊一之裁判長は「窒息の危険と死亡の予見可能性は相当に低かった」と指摘し、罰金20万円とした一審の有罪判決を破棄して無罪を言い渡しました。

 介護中の事故をめぐり捜査当局が異例の捜査で個人の刑事責任を問い、一審がそれを追認した事件。弁護団は無罪判決後の声明で、介護関係者らから「介護が萎縮し後退する」と不安や懸念が出ていると指摘し、検察に上告断念を強く求めました。

 昨年3月の一審長野地裁松本支部判決は、女性に「食事を丸のみしてしまう傾向があった」とし、窒息防止などのため、事故6日前におやつがゼリーに変更されたのに、准看護師が確認を怠ったとしていました。

 今回の判決は、女性が「入所後からドーナツのほかまんじゅうやどら焼きなどを食べていたが窒息を招くような事態はなかった」と指摘。ゼリーへの変更は主に「感染症対策のため嘔吐(おうと)防止を目的としていた」としました。

 またその変更は介護士の詰め所で保管されていた介護資料に記載されていたものの、「看護師に対する引き継ぎのためのものとは認められない」などと認定。一審が「准看護師が勤務の際にその資料を確認する義務があった」とした点を「飛躍がある」と批判し、ドーナツを提供したことが「刑法上の注意義務に反するとはいえない」と結論付けました。

 一審判決についてはさらに、「ドーナツによる窒息と死亡の具体的な予見可能性を検討すべきなのに、それをしないまま(准看護師の)過失を認めた」とも批判しました。

 入所女性は13年12月、ドーナツを食べた後に意識を喪失し、14年1月に死亡しました。准看護師は同5月に書類送検され、同12月に在宅起訴されました。


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