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2020年6月29日(月)

主張

専門家会議「廃止」

「次の波」への備えに不安募る

 西村康稔経済再生担当相が、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を廃止して新たな会議体をつくる方針を表明し、議論を呼んでいます。専門家会議の構成員に同方針は事前に伝えられませんでした。与党からも「話がなかった」との声が出ています。医学的見地から対策を助言するなど大きな役割を果たしてきた専門家会議をなくす話が、なぜ突然出されたのか。経過が不透明過ぎます。これまで尽力してきた専門家への敬意も欠いています。こんなやり方で次の感染拡大への備えを整えられるのか。安倍晋三政権の対策への不信は募るばかりです。

提言発表しているさなか

 専門家会議は2月14日、政府の対策本部のもとに、感染症や公衆衛生の専門家らを構成員に発足しました。感染が広がるクルーズ船への対応など、政府が示した案に応答する形で仕事は始まりました。その後、感染の広がりに対して強く警告を発する記者会見を何度も行ったのをはじめ、「3密」をつくらない、人との接触を8割減らすなどの提言を続けてきました。

 専門家会議の構成員は24日、約4カ月にわたる活動を通じ浮かび上がった課題を自ら検証し「次なる波に備えた専門家助言組織のあり方について」と題する提言にまとめ、記者会見で公表しました。

 政府と助言組織との関係では、「責任範囲と役割の明確化」を強調し、「助言組織は、現状を分析し、その評価をもとに政府に対して提言を述べる役割を担う」「政府はその提言の採否を決定し、その政策の実行に責任を負う」ことを提起しました。さらに、感染拡大の際の情報発信では「広く人々の声を聴き、市民の暮らしに与える影響や被害にまで心を砕いたコミュニケーションを実施しなければならない」として、「次の感染拡大を想定し、危機対応時におけるリスクコミュニケーションのあり方や体制について早急に見直しを」と政府に求めました。安倍政権のコロナ対応は、国民への心を込めた呼びかけが決定的に欠けていました。政府はこの提言を重く受け止めることこそ必要です。

 この記者会見のさなかに伝わったのが、西村担当相の専門家会議廃止方針のニュースです。尾身茂副座長は「それは知りません」と戸惑いを隠しませんでした。専門家会議をぞんざいに扱う政府の態度は極めて問題です。

 安倍政権は、全国一律休校や大規模イベント自粛要請などの際、専門家会議の意見を聞かずに独断で決定し、混乱を引き起こしました。一方、感染状況の詳しい分析や具体的対応の説明は、専門家会議に委ねる場面が目立ちました。

 専門家の科学的知見に基づく正確な情報を通じて、自ら国民と積極的に対話しながら対策を講じてこなかった安倍政権の姿勢が厳しく問われます。その検証や議論もなく、専門家会議を廃止し、新たな会議をつくると言われても、国民には不安しかありません。

混乱招いた経過説明せよ

 与党幹部が「聞いてない」というほど唐突に廃止方針が出された経過の解明は不可欠です。新たな会議体が、政治的思惑に左右されず専門家の意見を尊重する組織になるのかどうかも問題です。次の感染拡大への対策が、なにより急がれる時に事態を混乱させている安倍政権の責任は重大です。


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