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2020年6月23日(火)

「大阪都」構想

コロナ禍の今なぜ

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(写真)「大阪市廃止の住民投票は中止し、コロナ対策を」と訴える市民ら=11日、大阪市役所前

 大阪市を廃止し四つの特別区に分割する「大阪都」構想の制度案(協定書案)が19日、法定協議会で可決されました。なぜ今、大阪市廃止なのでしょうか。立場の違いを超えて市民ぐるみで新型コロナに立ち向かうべき時なのに。分断と対立を持ち込んでいる場合ではありません。(渡辺健)

11月住民投票と言うが

 大阪市廃止・分割の制度案は大阪維新の会、公明党、自民党府議団の賛成多数で可決されました。日本共産党が「百害あって一利なし」(山中智子市議団長)と反対したほか、自民党大阪市議団も反対しました。

 維新の会(代表・松井一郎大阪市長)は、府議会・大阪市議会の議決を経て、11月1日に大阪市廃止の是非を問う住民投票を実施したい考えです。

■15年に否決

 「大阪都」構想は2015年の住民投票ですでに否決されました。「一度だけ」「ラストチャンス」だったはずの住民投票を、なぜまたやるのか。維新は「バージョンアップ」したといいます。

 しかし、分割する特別区の数が五つから四つに変わったぐらいで骨格は同じです。大阪市をなくし財源も権限も「都(府)」に吸い上げて、「1人の指揮官(知事)」のもとで、やりたい放題のことができる体制づくりに変わりはありません。

 公明党は、反対から賛成に転じた理由について「住民サービスの維持」など同党の提案が受け入れられたことを挙げています。

 これは何の保証もありません。特別区設置の際は「維持する」という当たり前のことを明記しただけです。設置の日以後は「維持するよう努める」という努力義務になっているにすぎません。

 「初期コストの抑制」についても、いわゆる「中之島合同庁舎」でコストを浮かすというもの。四つの特別区は新たな庁舎建設はせず、既存の区役所を活用し、執務室面積が不足する特別区(淀川区と天王寺区)は特別区域を超えて、現大阪市本庁舎(中之島庁舎)を北区とともに活用する案です。他の自治体に庁舎があるというのは全国をみても離島ぐらい。災害時にいったいどうするのでしょうか。まったく自治体の体をなしません。

 自民党府議団が賛成に回ったのは、「権限、財源、人員が府に移れば大阪市の住民サービスが下がる可能性は高いが、スピード感をもって意思決定ができるようになる」「大阪全体のメリットを優先すべきだ」との意見が大阪市外の府議から出たからだと報じられています。

 “大阪市にはマイナスでも衛星都市にはプラス”と考えているのであれば、誤解か勉強不足です。大阪市から吸い上げられた財源は、大阪市内の大型開発に集中的に投資されるだけです。典型例が、カジノ誘致関連事業・「夢洲(ゆめしま)開発」です。しかも、カジノ誘致は米ラスベガス・サンズが日本から撤退するなど新型コロナで破たんが明らかな「成長戦略」です。

「現場」疲弊させた維新

公衆衛生見直し待ったなし

■あり方問う

 今の法律では、いったん大阪市を廃止すると元に戻すことはできません。「一度やってみて、ダメだったらやりなおせばいい」は通用せず、重大な選択を市民に迫るのが住民投票です。コロナ禍のさなかで、判断する十分な情報提供や議論の保証がありません。しかも制度案には、新型コロナが完全に抜け落ちています。対策もなければ、財政への影響の考慮もありません。

 意見募集の結果でも「住民投票は新型コロナの終息を待って実施すべきではないか」「今は新型コロナ対策に全力で取り組むべきだ」という意見が多数を占めました。これに、松井大阪市長は「いまだからこそ、(『都』構想を)やらなければならない。コロナ対策で大阪の対応が評価されているのも、府に司令塔を一元化したからだ。府市がバラバラにならないように制度として担保することが重要だ」と開き直っています。

 逆です。「都」構想を先取りし、「二重行政の解消」と称して行ってきた病院、公衆衛生研究所の統廃合、保健師の削減などの見直しは待ったなしです。「インバウンド(訪日外国人)頼み」の「成長戦略」、その象徴としてのカジノ誘致、背を向けてきた少人数学級など、これまでの維新政治そのものが問われています。

 維新前代表の橋下徹氏がツイッターで「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこはお手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」とつぶやくほどです。

 日本共産党大阪府委員会「大阪市廃止=大阪都ストップ」闘争本部は19日、「コロナ禍のもとでの『大阪市廃止』は許されない。大阪の力を一つに、『都構想ストップ』の審判を」とのアピールを発表。新型コロナは「これまでの大阪の政治・経済・社会のあり方を根本から見直すことを求めています。『大阪市廃止=都構想』案は破棄し、これからの大阪市のあり方を一から議論すべき時ではないでしょうか」と呼びかけています。

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