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2020年6月3日(水)

主張

コロナと障害児者

権利条約が求める施策が急務

 新型コロナウイルス感染の広がりは、障害児者とその家族らの暮らしを一変させました。障害福祉施設の職員は、障害児者らの暮らしを支える中で緊張が続く日々を送っています。安倍晋三政権の第1次補正予算では全く足りなかった障害福祉分野への支援について、関係者が切実な声を上げ、第2次補正予算案には一定の支援策が盛り込まれました。障害児者と支援する人たちのいのちと健康を守り、暮らしを支える措置を一層強めることが急がれます。

運営不安定にする日割り

 障害児者を支援する現場は、「3密」が避けられません。しかし、マスクや消毒液、防護服などが圧倒的に不足しています。感染リスクが高い中で、細心の注意を払いながら職員は業務にあたっています。障害児者は感染すると重症化しやすい人が少なくありません。国は早急に、障害児者と支援者を優先して不足している消毒液などを供給する必要があります。

 入所施設やグループホームで感染者が一人でも出れば、集団感染を引き起こしかねません。感染疑いのある入所者と職員にPCR検査ができる体制も求められます。

 施設で暮らす障害児者の中には、感染予防のためだけでなく職員の負担を減らすために、家族の元に戻る人もいます。支える家族の多くは高齢で、身体的・精神的な負担は重くなります。一時帰宅した間に、自宅で必要な支援を受けられるような措置が必要です。

 一方、入所者の帰宅により、施設運営事業者の運営費が大幅に減少する事例が出ています。日々の利用者数に応じた日割り計算によって、公費による報酬が支払われる仕組み(利用契約制度)のためです。事業者は普段でもぎりぎりの報酬による運営を余儀なくされています。消毒液などの経費負担が重くなっている上、感染予防で入所者が一時帰宅すると収入が減ってしまう事態は避けなければなりません。

 厚生労働省は障害福祉サービスなどの取り扱いに関する通達で、利用者の自宅で健康管理や相談支援などを行った場合、報酬の対象とすることが可能だとしています。しかし、「市町村が認める場合」に限っているため、自治体によって対応が異なっています。国の責任で施設が安定して運営できるようにすることが不可欠です。

 障害児が利用する放課後等デイサービス事業所の多くも、財政的な困難を抱えています。ここでも報酬が不安定な利用契約制度が背景にあります。コロナ禍で利用を控える障害児も少なくありません。障害児が大切な居場所を失わないような財政措置が重要です。

 コロナへの対応をした事業所や入所施設への報酬による手当てや、職員への特別手当の創設は欠かせません。

日本の制度の弱点ただせ

 コロナの事態は、障害福祉事業所の運営基盤の脆弱(ぜいじゃく)さをはじめ日本の障害者施策の弱点を浮き彫りにしました。障害者権利条約は、障害者はどこで誰と生活するかを選択でき、最高水準の健康を享受する権利を掲げています。日本が権利条約を批准してから初の国連・障害者権利委員会による審査が予定されています。障害児者と家族、支援者のいのちと健康を守るためにも、同条約が求めるような政策への転換こそが重要です。


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