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2020年5月25日(月)

新型コロナ感染防止 ベトナムの教訓(下)

早期発見と隔離徹底 予防医療の伝統活用

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(写真)5月4日、約3カ月半ぶりに登校を再開したハノイの中学1年生(日本の6年生)のクラス。現在マスク着脱は自由です

 「私たちより豊かで医療態勢も充実した国々で大変な犠牲が生まれている。阻止するしかない」。新型コロナウイルス感染症の発生初期、ベトナムの専門家たちはこう受け止めたのだとハノイ医科大のレ・ティ・フオン教授(予防医学・公衆衛生)は振り返ります。

 トップの専門家が加わる国家指導委員会を1月27日に発足させたベトナムの対策は、「早期発見、隔離徹底」を重視。感染者の入院隔離はもちろん、直接の接触者と外国からの帰国者に対して、学生寮や軍の営舎での2週間の「施設隔離」の措置がとられました。

 タインニエン紙報道の国防省統計によると、5月10日の時点で施設隔離を完了した人は28万2312人にのぼります。

 米国バージニア州の留学先から3月下旬に帰国したグエン・トゥ・トゥイさん(23)は、ハノイ市内の学生寮で「初めて見知らぬ人と相部屋で暮らしました」と振り返ります。

 「でも2週間の隔離は理にかなっていると思います。万一、両親にうつすことを考えたら」。ゴザ敷きのベッドが少しこたえたが、昼夜を問わず働く公務員や兵士の苦労を思うと不満を言う気にはならなかったといいます。

 医科大のフオン教授は、こうした対策が奏功した要因には、国民の一致団結とともに、予防医療の発展の歴史があると指摘します。

費用対効果良い

 「ベトナムではとても古く、独立(1945年)以前から、予防医療が重視されてきました」「病気を予防できれば、治療するよりも節約できます。治療が個々人に限られるのに対して、予防はコミュニティーを対象にできるので費用対効果がとても良い。この大学でも病院勤務の医師と予防医療の医師の両方を養成しています」

 ベトナムでは小規模ながら全国の村・集落や町内に1万1100カ所の保健所が設置されており、国民に最も身近なところから予防医療を担っています。高齢者や妊婦、新生児、軽症者のケアのほか、感染症の発見もその任務に含まれます。

 今回の新型コロナでも住民の健康申告、検査や隔離で地域保健システムが「よく運用された」(フオン教授)といいます。予防医学の学生は、検体採取や分析、健康申告の増援部隊となりました。

社会共同の成果

 フオン教授はいいます。「今回、初期段階の感染拡大を抑え込めたのは、各団体、民衆、社会の共同の成果であり、成功はすべての人のものです。ただ、そのなかで最も重要だったのは、やはりリーダーシップ(指導力)です」

 ベトナム政府は現在、段階を一つ前に進め、経済回復・生活保障と感染症防止を一体的に追求する課題に取り組んでいます。

 (ハノイ=井上歩 写真も)(おわり)


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