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2020年5月24日(日)

新型コロナ感染防止 ベトナムの教訓(中)

情報発信と透明性 メッセージが響いた

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(写真)「新型コロナウイルス感染症対策は、あなた自身、家族と社会を守る」と書かれた巨大な啓発ポスター=ハノイ市内

 1月下旬以降のベトナムの新型コロナウイルス感染症対策では、さまざまなスローガンが普及しました。最も広く使われたのが、「敵に抗するように疫病に立ち向かう」。大国の侵略や支配に抵抗して独立を勝ち取ったベトナムの歴史と、密接な関係を持つ言葉でした。

 ベトナム共産党中央委員会で対外副委員長を務めたチャン・ダク・ロイ氏は「ベトナムで敵とは外国からの侵略者のことです。国を挙げて侵略とたたかうときには、保健、外務、軍、公安などの各部門だけでなく、国民だれにでも仕事があります」と説明します。

 かつての抗米救国戦争中と同様、作詞家・作曲家なら歌をつくる。人気あるスポーツ選手らは市民を励ます。感染予防の意識を高めるため住民同士が声をかけあうのも“役割の実行”であり、ベトナム国民には「集団的な責任感がある」といいます。

国民の皆に役割

 「敵に抗するように」とグエン・スアン・フック首相が発信したのは1月27日。テト(旧正月)3日目に開かれた緊急会合で、大きく報じられました。あわせて感染症から「生命と健康を守る」のが第一の目標だとも宣言され、こうした政治からのメッセージは「社会や国民にしっかりと伝わり、作用した」とロイ氏は語ります。

 ハノイ市内のフランス料理店店主チュオン・クアン・タインさん(48)は、順調だった経営が新型コロナの影響で大きな赤字に転落。それでも国の感染症対策への反発はなかったといいます。

 「政府の本気や決意を感じました。たしかに経済的な損害が出るだろうが感染症を収束させられれば一定期間ですむ、と理解しました」

 この数カ月間、ベトナムメディアはスマートフォンに次々と速報を打ってきました。「航空会社乗務員560人をいっせい隔離」「病院感染源を追跡」。政府と市民はアプリなどを通じ、全事例の感染状況(個人情報を除く)を共有していました。

防疫意識高まる

 グエン・スアン・フック首相は21日の本紙インタビューで「毎日逐次の情報発信と透明性は、国の方針や対策への社会の同意を強め、国民は防疫意識と参加主体性を高めました」と語りました。

 英ユーガブ社が18日に発表した世論調査で、ベトナムでは94%が政府の対応を信頼し、89%がメディアの情報を信頼していると回答しました。シンガポールとフランスの会社による別の世論調査でも、82%が政府の対応を高く評価しています。(ハノイ=井上歩、写真も)(つづく)


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