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2020年5月24日(日)

主張

コロナと国際社会

危機克服へ連帯と協力 今こそ

 世界保健機関(WHO)は年次総会(18~19日)で新型コロナウイルスの感染収束のために、国連を中心とした国際協力の強化を呼びかけた決議を全会一致で採択しました。米国と中国の対立の顕在化という困難な局面の中でも、WHO総会が国際協力を決議したことは重要です。国境を越えてまん延するウイルス感染症に、各国と国際機関は結束して立ち向かわなければなりません。

問われる責任ある行動

 決議には、医療体制の強化や途上国支援、「グローバルな公共財」と位置付けたワクチン開発での協力と開発された際の「公正な配分」など加盟国と国際機関が取り組むべき行動が盛り込まれました。決議に照らせば、コロナのパンデミック(世界的大流行)の収束に向けた国際協調に各国が役割を果たす時です。なにより世界最大の資本主義国・米国と、世界第2の経済大国・中国には責任のあるふるまいが問われます。

 ところがトランプ米大統領はWHO総会でも国際協力を妨げる態度をあらわにしました。会議に参加せず、テドロス事務局長にあててWHOと中国を非難した書簡をツイッターで一方的に公表する異常な行動をとりました。WHOが30日以内に「改善」に取り組まなければ拠出金停止を恒久化し脱退も辞さないという強硬姿勢です。

 WHOの対応が適切であったか検証することは当然です。今回の総会決議は、WHOのコロナ対応について「公平かつ独立した包括的な評価」を事務局長に求めました。この検証はWHOの能力を強化するためです。公衆衛生を担う唯一の国連専門機関の活動を弱める動きは、誰も望んでいません。

 米国は総会決議に賛成しつつ、決議に記された、ワクチンや医療技術の「公正な配分」の項に不同意を表明しました。「知的財産権」が理由です。コロナのワクチンが開発されても、利益最優先の大手製薬企業や大国に独占されたのでは貧困国に行きわたらず、世界的な対策に広大な空白が生じます。ワクチンが大国支配の手段とされかねません。これも「米国第一主義」の重大な弊害です。

 中国の習近平国家主席は総会の演説で「終始、公開、透明、責任ある態度」でWHOなどに情報を伝え、国際的な支援に力を尽くしたと述べるだけで、初動での情報隠しやWHOへの圧力など、指摘されている問題に答えませんでした。こうした中国の態度も国際協力にとって障害となっています。

 かつて米国とソ連(現ロシア)が軍拡競争をしていた時期でも天然痘根絶やポリオ生ワクチンの実用化で両国は協力しました。エボラ出血熱の際にも国際社会は力を合わせました。コロナでまだ協調した対応がないことは大問題です。

遅れの打開を一刻も早く

 国連安全保障理事会は米中対立によってコロナ停戦決議を採択できずにいます。グテレス国連事務総長が、感染対策のため世界の武力紛争当事者に即時停戦を呼びかけたのは3月です。それに法的効力を持たせ、紛争地域での国際機関の活動や援助物資の輸送を保障するための決議こそ急がれます。

 紛争地や途上国での感染者、死者の増大も伝えられており、もはや一刻の遅れも許されません。米中を含む国際社会が連帯と協力をすることが求められます。


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