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2020年5月12日(火)

利用児童が激減 保育士の感染も心配

新型コロナで病児保育は

休めない親 国が継続の支援を

 仕事を休めない保護者の代わりに、病気やけがなどの子どもを保育し、看護する病児保育。通常の保育園よりも医療的側面が手厚いこの病児保育が、新型コロナウイルス感染拡大で苦境に立たされています。(堤由紀子)


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(写真)ろくごうかい病児保育室の室内。病児同士の感染を避けるための個室があります。座った状態でも外から子どもが見えるよう、壁(右側)の下にも窓を作りました

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(写真)中野健太さん(右)と真紀さん

 病児保育室は風邪、インフルエンザやおたふくかぜなど、子どもが日常的にかかりやすい病気で、通常の保育が難しい乳幼児や小学生が対象です。

 しかし、新型コロナの感染拡大にともない利用者が激減しています。

子どもの命も保育士の命も

 「激減の理由として考えられるのは二つ。一つは、子どもの具合が悪くても、保護者が在宅で仕事をしながらみているということです」

 こう話すのは、大阪府内の病児保育施設長です。

 風邪とコロナ感染初期との判別がつきにくいため、病名が確定した子どもだけ受け入れます。ところが、判別のための検査には防護のガウンや手袋なども必要なため、検査する小児科医が減少。その結果、利用児童も減りました。

 利用児童激減のもう一つの理由は、休校要請で保育園や学校に通う子どもが減り、感染症そのものが減っていることです。

 同施設は10人定員で午前8時から午後7時まで。看護師2人と保育士9人のシフト制です。4月の利用者は8人でしたが「医療従事者やひとり親など、どうしても働かなければならない人のために開けています」。職員を休ませなければならず、雇用調整助成金の申請を準備中です。

 同施設長は「雇用調整助成金の申請一つとっても、山のような書類が必要でとても大変です。もう少し申請しやすくしてほしいですし、ほかにも使える制度がほしい」と要望します。「具合の悪い子どもを抱っこしてあげたいし、鼻水もふいてやりたい。同時に保育士の命も守りたいのです」

交付金加算のしくみに矛盾

 「1人でも子どもが来てくれて、それが社会のプラスになるのなら、がんばろうという状態。このままではもちません」

 こう話すのは京都市内にある「ろくごうかい病児保育室」の施設長、中野健太さんです。

 昨年4月に開室。きっかけは、子ども2人がインフルエンザにかかり、夫婦で計20日間も休まなければいけなかった体験でした。妻で看護師の真紀さんは「市内の病児保育はすでにいっぱい。働きながらどう子育てをしたらいいのかと」。2人で考えた結果、自分たちで病児保育を立ち上げることに決めました。

 昨年度の利用者は月平均36人、6月、7月は月60人ぐらいでした。しかし、年度末の3月は7人に激減。新年度の4月はたった3人でした。

 定員4人で保育士と看護師が1人ずつ。人件費も水光熱費もかさみます。

 厚生労働省は4月17日、コロナの影響による子ども・子育て支援交付金の扱いについて、事務連絡を出しました。しかし、病児保育にかかわる交付金の支援は「訪問型」を念頭に置いたもの。訪問型ではない、多くの病児保育施設への支援にはなりません。

 また、交付金の加算のしくみそのものが、利用児童数が安定しない病児保育のシステムにそぐわないことも、矛盾を大きくしています。

 2月末の安倍晋三首相の「一律休校要請」で、「なるべく自宅で待機を」といわれた小学生の利用が減りました。その後、保育園の利用抑制も重なり、もともとの“母数”が減らされていった経緯があります。「政策的に利用児童が減らされた中でも、いまだに“数”で見るというのはどうなのか」と健太さんは憤ります。

 「長い時間、病児と密に接するため医療的部分が非常に大きい。そのサポートや配慮もほしい」と真紀さん。健太さんも言います。「親が休んで子どもをみれればいいけれど、まだその条件はない。どうしても休めない親がいるなら、今は1人でも0人でも開けておきたい。その保育を続ける支援を、国がきちんとしてほしいのです」


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