2020年4月21日(火)
「武漢日記」を国外で出版へ
当局のコロナ初期対応批判
中国保守派からは異議も
新型コロナウイルスのまん延で封鎖された中国湖北省武漢での生活を描いた作家・方方氏の「武漢日記」の英語版とドイツ語版が出版されることが決まりました。しかし、中国国内の保守派などが、米国などでの出版に異議を唱えています。(小林拓也)
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方氏の日記は、封鎖下の武漢の日常を描きながら、「『人から人感染はない、制御は可能』、この言葉がこの都市を血と涙と無限の苦しみに変えた」など、当局の初期の対応を厳しく批判しています。
国外での出版に対し、中国のインターネット上では、「国家や民族を攻撃する武器を相手に与えることになってしまう」などと攻撃する論調も出ています。ナショナリズムを強調する論調で知られる胡錫進(こ・ようしん)氏(中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報の編集長)は9日のブログで、「中国が米国からの厳しい攻撃に直面している時に、方方氏の日記が米国で出版されるのは気持ちのいいものではない」などと指摘しました。
方氏は11日、中国メディア・財新などに掲載されたインタビューで、「国外で出版するから売国だというのは、幼稚な考えだ」と批判。「もともと国内の数十の出版社が出版の意思を示していた。しかし極左(国家主義者)が私を攻撃したため、すべての出版社が手を引いた」と明らかにしました。
その上で、方氏は「中国の初期の怠慢と、欧米が中国の防疫の経験を信用しなかったことが、無数の庶民の命を失わせ、生活を破壊し、人類に重大な損害を与えた」と指摘。「人類は傲慢(ごうまん)になり、思い上がっていた。人類は小さなウイルスの力を過小に見ていた。この教訓は全人類のものだ」と強調しました。