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2020年4月20日(月)

コロナ苦境の道東観光地

街の明かり 消すまい

“まず必要なのは補償”

 安倍政権の「緊急事態宣言」に先駆けて2月末、鈴木直道知事が「宣言」を出した北海道。新型コロナウイルス感染が広がり、外国人観光客もほぼ皆無となり、補償のない「外出自粛」要請が、深刻な事態に拍車をかけています。15日、苦境にある道東の観光地を日本共産党の畠山和也前衆院議員と一緒に訪ねました。(中川亮)


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(写真)釧路観光コンベンション協会の山田専務理事(手前)と懇談する(左から)畠山、村上、梅津、工藤各氏=15日

釧路市

 全国屈指の漁獲量を誇り、春を迎えたこの時期には地元客や観光客でにぎわうはずの釧路市。街はびっくりするほど閑散とし、飲食店にほとんど客が見当たりません。

 「釧路の飲食店は全滅状態。ホテルもボロボロの状況だ」と語るのは、釧路観光コンベンション協会の山田達也専務理事です。コロナ関連の宿泊キャンセル数は7万件にのぼっていると言います。

 道内外から30万人近くが訪れる夏の「くしろ港まつり」も中止を含めて検討されています。ホテル・旅館の廃業が続くと、大型イベントの受け入れが難しくなると山田専務は懸念します。「いま第一に営業補償が必要、従業員の生活保障をやってもらわないと。街の明かりをこれ以上消したくない」と力を込めました。

 日本共産党市議団も緊急要望し、市は全道でいち早く独自の「つなぎ融資」を実施。すでに3000万円を貸し出しています。

消費税減税が一番

 小規模事業者への融資とともに、消費税減税が「一番いい」と強調する山田専務。「何にでもつきまとうのが消費税。減税は需要喚起になる」と話し、家賃など固定費補助や融資条件の緩和ときめ細かな支援を求めました。

 釧路市中心部から北へ国内最大の釧路湿原を抜けてたどり着いたのは、山肌や道路脇に真っ白い雪の残る阿寒湖。途中、道路を横切るエゾシカの集団にたびたび遭遇しました。「自然との共生を大切にするアイヌの世界観」を感じるイベントで人気を集めています。

 「阿寒観光協会まちづくり推進機構」の山下晋一専務理事は、「3月の宿泊は7割減だった。まもなく準備を始める『阿寒湖の森ナイトウオーク』(5~11月)の開催もどうなるか」と不安を口にしました。

弟子屈町

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(写真)3月末で廃業した大型観光ホテル「きたふくろう」=北海道弟子屈町

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(写真)ホテル「欣喜湯」の榎本社長(右)に話を聞く(左から)畠山、小川両氏=15日、北海道弟子屈町

 摩周湖や屈斜路(くっしゃろ)湖など大自然が広がる弟子屈(てしかが)町。硫黄の採掘と鉄道敷設で栄えたのが川湯温泉街です。「源泉100%かけ流し宣言」を掲げる温泉の街が、自粛を求めながら補償はないという「緊急事態宣言」によって、冷水を浴びせられています。

 温泉街に着くと、歓迎するように硫黄のにおいが漂います。「新型コロナウイルス事情により3月末日限り廃業」すると告知し、大手観光ホテル「きたふくろう」が倒産しました。3月9日付で従業員全員を解雇。1985年設立、売上高を約5億1300万円計上した時期(2006年)もありましたが、今回宿泊キャンセルが続出し、経営を断念。同規模のホテルは川湯で3社に減りました。

 創業79年の老舗ホテル「欣喜(きんき)湯」の榎本竜太郎社長(40)は、「(知事の)宣言以降は宿泊客が10人という日が続いています」と語ります。曽祖父の代に始まり、ホテルに入ると、大きなこぶが付いた木の幹が目に飛び込んできました。

 「縁起物のようで、お客さんはみなさん触れていかれます」。経営が厳しいもとでも社員の意欲を落とさず、しっかり雇用を守ろうと雇用調整助成金を申請しました。

 「しかし助成金がでるまで2カ月かかる。一番ほしいのは収入補償です」と榎本社長。「町議会も窮状を聞いてくださり、町が金融支援策を具体化しました」と喜び、次は来客名簿を他のホテルとも出し合い、セールスしようと前を向きます。インターネットを通じて、「しんどいときだから自分の未来にごほうびを。新型コロナウイルスが落ち着いたら、川湯温泉に来てください」。

支援とにかく早く

 「『自粛しろ』『7割~8割人に会うな』と言われても、会社をやめるわけにいかない。営業しているわけだから“生殺し”のようにはしないでほしい。大企業目線でなく、町の小規模事業所を助けてほしい」。とうとうと現状を話した弟子屈町商工会の近藤明副会長。廃業が相次ぐ危険があるといい、手持ち資金がわずかな事業所が多く、「とにかく急いでほしい」と政府への要望を訴えます。

 薬局を営む竹森英彦会長は、医療体制の不安を口にしました。

 「弟子屈で発熱者が出てもどうにもならない。検査する場所がない。医療圏の中心の釧路市まで、熱が出ているのに行けるでしょうか」。弟子屈から釧路まで約70キロ離れています。町民にとって大切な摩周厚生病院は、厚生労働省が推進する公立・公的病院の再編・統合のリストに挙げられています。

 近藤副会長は語気を強めました。「いま政府は、国民の方を向いているのでしょうか」

 「地域を回り、外出自粛・休業要請で直接・間接の損失を受けているすべての人と事業者への補償が、一刻も早く求められていると改めて痛感しました」と畠山氏。「苦難を軽減し、道民の希望のかけ橋となるよう全力を尽くします」と語りました。

 各地の訪問には、村上和繁、梅津則行、工藤正志各釧路市議、小川義雄弟子屈町議が同行しました。


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