2020年4月17日(金)
きょうの潮流
「心に響く映画」。岩波ホールの総支配人だった高野悦子さんは、よく作品の選び方を聞かれると、そう答えていました▼大手の劇場では上映されない世界中の名画を紹介したい。高野さんたちの「エキプ・ド・シネマ(映画の仲間)」の運動が始まったのはおよそ半世紀前。日本のミニシアター文化の先駆けといわれ、各地にひろがっていきました▼「日本で上映される年間1300本ほどの映画のうち、1000本くらいはミニシアターで上映されている」。多様性を伝え守ってきた文化の拠点が閉じてしまったら、その地域の損失は膨大だ―▼いまコロナ禍のなかで映画監督や俳優らがミニシアターの価値を訴えています。安倍政権の補償なき自粛と休業要請による危機とともに。有志の呼びかけ人と賛同者で「#Save The Cinema」を立ち上げ、緊急支援をもとめる署名を集めて政府に要請しました▼要望書は「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要。特に今は」というドイツ文化相の言葉を紹介。地域に根ざし、映画文化の中核を担ってきたミニシアターは、美術館や劇場などの文化施設、劇団や美術家、音楽家たちと同じく「民主主義社会に欠くことのできない存在」だと▼人間を尊重し、生きる勇気や希望をもたらしてきた発信地。厳しい状況のなかでも人びとのきずなによって守り受け継いできました。表現の自由の最前線で文化の輪をつないできたともしび。それを消すわけにはいきません。








